【試乗】濡れたサーキットをものともしない圧倒的な「安定感」! S660モデューロXバージョンZの最強っぷり (1/2ページ)

仕様ごとの違いを明確に体感できるよう水が撒かれたコースを用意

 ホンダS660の標準モデルαとモデューロ用品装着車、そしてモデューロXバージョンZの3台を千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイサーキットで乗り比べた。

 3台とも6速マニュアルトランスミッション仕様で、エンジンも含めパワートレインはノーマルのまま。タイヤも標準装着の同一タイヤにそろえられている。

 千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイサーキットは1周約2.5km。一見フラットな敷地に見えるが、1~2コーナーにかけて登り勾配があり、2コーナーを頂点に3コーナーへと駆け下りながら第一ヘアピンへとアプローチする難所がいくつかある。見た目以上に難易度が高いコースなのだ。

 今回はそのうち2コーナー、第1ヘアピン、高速ベンド2箇所と第2ヘアピンに水が大量に撒かれていて、滑りやすい路面が意図的に作られていた。聞けば開発ドライバーの土屋圭市さんが「ここに撒け」と指示したという。とくに難易度の高いコーナーをさらに滑りやすくすることで、チューニングの効果をより明確に体感できるというのだ。下手をすれば、どの仕様でもスピンしかねないような難しい路面状況だ。よほど完成度に自信があるのだろう。

 まずは標準のαでコースインする。サーキット走行ではトラクションコントロールをオフにして走行する。αの走りはサスペンションがしなやかでロールが大きめ。ウエットパッチではまず前輪がズルズルと滑りハンドルの切り増しが必要。少しタイミングが遅れて次はリヤが滑り出し、カウンターステアとアクセルコントロールでドライバーが制御しなければならない。

 しかし、大きなスキッド下ではVSA(ビークルスタビリティアシスタント)が介入し、スピンは回避しつつ立ち上がりトラクションをかけて加速できる。タイヤが滑る感覚になれていない人はかなりドキっとさせられるだろう。ドライ路面の最終コーナーを99km/hで抜け、ホームストレートは132km/hまで車速が伸びる。

 一方、本来最高速が記録できる2~3コーナー区間ではウエット路面の影響を大きく受けリヤがスキッドして全開で抜けるのが難しい。タイヤを温めてどうにか全開で抜けてみると133km/hを記録するのがやっとだった。ただ車速はさらに伸びる余地があるものの、速度リミッターが穏やかに作動し、速度の上昇を抑えているのもわかった。

 次にモデューロの用品装着車に乗り換える。走りはじめの第1コーナーからクルマの安定感がまるで違う。ロールが少なく、専用設計されたホイールの効果も大きく、ステアリングの手応えがグッと増している。ウエット路面でもタイヤの滑りが少なくて安心してアクセルを踏み込んでいけるのだ。

 αとの感覚の差は想像以上に大きい。最終コーナーは100〜101km/hで通過でき、ホームストレートでは133km/hまで車速が上がって、区間タイムは明らかに速い。2~3コーナーの難所も難なく全開で通過でき、最高到達速度は135km/hをメーターで視認できた。

 S字高速コーナーでも安心感が高まっている。ただ強化ブレーキの利きが良すぎてハードブレーキングでは前荷重が強くなり過ぎ、速度コントロールの難しさも表れていた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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