単に4輪で駆動するだけじゃない! クルマやメーカーでまったく違う「4WD」の中身とは (2/3ページ)

強い駆動力と旋回の自由度を確保する4WDシステムも!

 センターデフとして、もっとも簡易的かつ実用的な方式がVCU(ビスカスカップリング方式)で、通常は2輪駆動走行、前後車輪間に回転差が生じた場合に非常用駆動輪に駆動力が伝わる方式で、即座に4WD方式に移行できる方式であることから、スタンバイ4WDと呼ばれる方式だ。また、このVCUは、機械式センターデフを持つフルタイム4WDシステムで、センターデフの動きを制御するLSDとして用いられる場合もある。

 デファルンシャルギヤは、2WDなら左右輪、4WDなら前後輪に回転差を生じさせることでスムースな旋回運動を可能するメカニズムだが、一方(左右輪、あるいは前後輪)が空転すると、もう一方にも駆動力が伝わらなくなる特徴がある。機械式センターデフを持つ4WD車で、VCUを差動制御デバイスとして用いるのはこのためで、フルタイム4WD車といえども前後輪に制御装置を持たず、なおかつセンターデフにも制御装置がないと、走行条件(4輪の接地条件)によっては0輪駆動に陥る場合もあるのだ。

 逆に、前後輪に差動制御装置を持ち、なおかつ強い駆動力と旋回の自由度(ハンドリングの自由度)を確保しようとしたフルタイム4WDシステムも存在する。スポーツ4WDとも言える方式で、舗装の高速走行から低μ路走行まで想定した、競技ベース車両と言い替えてもよいだろう。該当車両としてはスバル・インプレッサ、三菱ランサーエボリューション、日産スカイラインGT-R(日産GT-R)などが挙げられる。

 インプレッサは、もっともスポーツ性の高いSTI系モデルで、しかも競技ベースを想定したRAグレードで採用されたドライバーズ・コントロール・センター・デフ(DCCD)がこれに該当する。もともとは、AT車用の4WDで使われていたVTD(可変トルク配分)機構をMT車に応用したもので、センターデフの差動力制御を電気的な制御によって幅を持たせたもので、センターデフロック状態からフリーの状態まで、ロータリースイッチによってほぼ無段階(実際にはステップ有り。10段階程度)に連続可変で選べる方式だ。しかし、通常の一般公道走行では、センターデフフリーの状態がもっとも走りやすく、よほどの低μ路、低速走行でない限りデフの差動制限は必要ないと思われる走行特性だ。

 ランサー・エボリューションの4WDシステムは、WRCで開発されたアクティブ・センター・デフ(ACD)方式が4WDの走行モードを選べる設定として登場した。エボリューションⅦから採用されたシステムで、三菱は、ラリーカーとして最強の駆動力配分は前後50対50と考え、進路方向決定のステアリング操作の場合には、瞬間的にセンターデフの拘束力を解除して回頭性を確保し、その直後にコーナリングスピードを得ようとアクセルオンの操作を行った場合、再びセンターデフを拘束する方式だ。

 さらに、リヤの駆動力制御にAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を使い、高い旋回性能と旋回性のよさを確保した上で、センターデフの拘束力をターマック(舗装)、グラベル(非舗装)、スノー(低μ路)の3段階に分けて4WDの選択モードとしたのがランサー・エボリューションの方式だった。


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