単に4輪で駆動するだけじゃない! クルマやメーカーでまったく違う「4WD」の中身とは (3/3ページ)

一般道ではセンターデフフリーがもっとも走りやすい

 センターデフの拘束力を3段階に分けて選択式としたシステムだが、実際どのモードがどの路面に合っているかは一概には断定できず、走りやすさで言えばターマックモードが最適で、この状態で積雪路を走っても何ら問題なく走ることが可能である。インプレッサのDCCDもまったく同じだが、センターデフの制御力を強めた場合、とくに氷雪路走行を考えてもらうと分かりやすいが、アクセルのオン/オフによる姿勢制御技術を持たないと、かえって乗りにくさを助長する場合も十分あり得るから要注意だ。

 フルタイム4WD車の4WDモード選択は、一見すると走行条件(路面条件)に応じた4WDモードを選ばなくてはならないようにも思えるが、一般公道走行ではよほど路面μが低くならない限りセンターデフフリーの状態がもっとも走りやすく快適だ。また、前後軸はそれぞれLSDによって制御されているため、駆動力が抜けるようなケースも考えにくい。

 なお、GT-RのアテーサE-TS方式は、前後駆動力0対100~50対50の間で、後輪(駆動輪)のスリップに応じて前輪に駆動力を伝える方式で、フルタイム4WDの一種と考えられるシステムだが、センターデフは持たず、前輪へのトレク伝達はトランスファーで行い、トランスファー内のマルチプレートクラッチの圧着圧力を油圧で制御。この油圧の強弱で前輪に伝えるトルクの大小を変化させている。

 言ってみれば、オートマチック4WD方式と言えるもので、後輪駆動を軸にシステムを構成。回頭性の自由度と姿勢安定度(前輪トルクによるヨーの制御)、余剰駆動力の適正配分といった点から高速舗装路に向く4WDシステムで、常時前後50対50が最強の駆動力配分と考えるWRC指向の三菱とは好対照の方式である。また、構造的にもこうした考え方の違いから、三菱やスバルと異なって4WDモードの選択設定は持たない。

 4WDの選択モードは、パートタイム4WD方式の場合はハンドリングと走破力の関係から大きな意味を持つが、フルタイム4WD方式の場合は、システムの構造上便宜的に設けられたものと言え、効果の違いはあるものの、実用上はあまり差異がないものだ。


新着情報