開発者の「あそび心」から生まれたS660! 消えゆく名車の7年を振り返る (2/2ページ)

これまでにも多くの特別仕様車が登場した

 走りについては「痛快ハンドリングマシン」というコンセプトを掲げ、「通勤中の交差点を曲がるだけでも痛快アクティブになれるクルマ」を目指し、ドライバーの身体とクルマが一体となり、思い通りに操れる感覚を重視した。クローズドボディではなくオープントップとしたのもそれが大きな理由だという。

 そうして出来上がったS660は特殊な構造を持つ少量生産モデルのため、当時の八千代工業四日市製作所(現・ホンダオートボディー)に生産を委託。椋本LPLは「その現場に何度も足を運び、一緒になってクルマを作り上げた」と当時を振り返っている。なお同社は発売以降、ファンを工場に招いたイベントを開催している。

 S660は2015年3月30日のデビュー当時より現在に至るまで、上級タイプ「α」と廉価モデル「β」の2グレードを基本としているが、その当初より特別仕様車を数多く設定している。

 ローンチエディションと言える660台限定モデルの「コンセプトエディション」は「α」をベースに、2013年11月の東京モーターショーに出品された「S660コンセプト」モチーフとして、専用レッドステッチ入りのアシンメトリーカラースポーツレザーシートを運転席に採用したほか、ボルドーレッドロールトップ、2トーンカラーサイドミラー、内部ブラック塗装エキパイフィニッシャーなどを標準装備した。

 2017年には、6月2日から11月30日期間限定で、「α」をベースに特別色ベルベットマルーン・メタリックを設定したほか、内装も専用のジャズブラウン本革とし、ブラックのドアミラーとアルミホイールを装着してシックな装いを与えた「ブルーノレザーエディション」を設定。

 さらに「β」のCVT車をベースとして、特別色ヒダマリアイボリー・パールを設定したほか、内装色をライトタンとし、ブラウンルーフトップを装着して温かみのある雰囲気をまとった「コモレビエディション」を、同年11月10日から2018年1月31日までの期間限定で販売している。

 2018年5月24日には、ホンダアクセスが手掛けるコンプリートカー「モデューロX」を発表する(発売は7月6日)。

 同社が掲げる“実効空力”のコンセプトに基づいた前後バンパーおよびガーニーフラップ付きアクティブスポイラー、前後5段階減衰力調整機構付きサスペンションを専用開発したほか、スポーツブレーキパッドとドリルドディスクローターを標準装備。内装には本革とラックススェードを多用しながら、ボルドーレッドとブラックの2トーンに仕立てることで、走りと内外装の質感を大幅に向上させた。

 また同年12月21日には、ブラウンロールトップやブラッククリア塗装の専用アルミホイール、専用トラッドレザーインテリアなどを標準装備して、ブリティッシュライトウエイトスポーツカーさながらの佇まいを持たせた特別仕様車「トラッドレザーエディション」を発売。

 2020年1月10日には最初で最後のマイナーチェンジを行い、「α」「β」「モデューロX」とも内外装の質感を一段と高めている。

 そして2021年3月12日、ファイナルエディションとなる特別仕様車「モデューロXバージョンZ」を発表。2022年3月の生産終了まで残された時間は1年と余りにも短いが、熟成が進んだS660を新車で、好みの仕様に仕立てられるのは今しかない。


遠藤正賢 ENDO MASAKATSU

自動車・業界ジャーナリスト/編集

愛車
ホンダS2000(2003年式)
趣味
ゲーム
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