アルファードを超える豪華ミニバンとして期待は大きかった! なのに「グランエース」が低迷する理由 (2/2ページ)

コスパを考えればハイエースのほうがメリットあり

 グランエースの売れ行きを販売店に問い合わせると、以下のように返答した。「販売台数は、発売当初から少なかった(もっとも多く登録された2020年3月が230台)。しかも最近はコロナ禍の影響で伸び悩んでいる。それでも2021年6月28日に改良を行う予定で、4月16日には受注を一時的に停止した」。

 グランエースは、法人向けのミニバンとして開発され、4列シートの8人乗りも選べる。6人乗りのプレミアムは法人におけるVIPの移動用、8人乗りのGは旅館やホテルの送迎用を狙って開発された。そして過去の登録台数を振り返ると、本格的な販売を開始した2020年1月から6月までは、1カ月当たり100台以上だった。この段階でグランエースを必要としている法人には行き渡ったと考えられる。その後はコロナ禍の影響を受けて、旅館やホテルの業績は大幅に悪化した。車両の入れ替えが予定されていても、延期されただろう。プレミアムを選ぶ企業も同様だ。毎月の登録台数は50〜60台に減った。

 またトヨタにはハイエースワゴンもある。GLは全長が4840mm、全幅は1880mm、全高は2105mmで、グランエースに比べるとボディがコンパクトで運転しやすい。しかもボンネットのないワンボックスワゴンだから車内は広い。室内長は3715mmでグランエースGの3365mmを上まわる。乗車定員も10名と多い。

 価格はハイエースワゴンGLは311万6000円だ。グランエースGの620万円、プレミアムの650万円に比べると約半額だから、コスト意識の強いビジネス用途であればハイエースワゴンが選ばれる。そこでハイエースワゴン(バンを除く)の登録台数を見ると、1カ月平均で700台を超える。グランエースは約60台だから、ハイエースワゴンの売れ行きは10倍以上だ。

 このように法人ユーザーは、グランエースを検討したときに、割安で販売実績のあるハイエースワゴンと比べて判断する。そうなるとハイエースが選ばれやすい。

 仮にクルマ好きの一般ユーザーがグランエースを求めれば、高価格でも購入する余地が生じるが、大柄なのに外観やインパネは地味だ。エンジンは2.8リッターのクリーンディーゼルターボのみで、アルファードのようなハイブリッドは用意されない。一般ユーザーも魅力を感じにくいため、結果的に売れ行きが低迷した。結局一般ユーザーはアルファード、法人はハイエースワゴンを選んでいる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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