ぶっつけ本番でも「セッティングの鬼」と化す! 中谷明彦が挑んだ久々の本気レース「ウラ話」その2 (2/2ページ)

攻めたサスペンションセッティングを決勝ぶっつけ本番で試す!

 翌日曜日はサンデーレースのみの走行だ。すでにニュータイヤは使い果たしてしまったので、土曜日の予選で使用したリヤタイヤ4本を前後に履かせてスタートした。ニュータイヤではないので序盤はニュータイヤ勢に引き離されてしまうだろう。ただ、サタデーレース後にさらにマシンにセットアップを加えた。他車と競り合うなかで、サスペンションのジオメトリーがフロントにアンチノーズダイブ、リヤはアンチスクワットとなっていると疑い、バロン氏に確認すると「その通り」だと。

 恐らくFFによるプッシュアンダーとブレーキング時のリヤの不安定を嫌ったデフォルト設定がそうなっていると考えられる。そこでフロントにアンチリフト(アンチダイブをキャンセル)、リヤもアンチリフト(アンチスクワットはキャンセル)のジオメトリーを提案。するとJ.A.S社の詳細なサスペンションジオメトリーの表を見せてくれて、数値を指定した。

 試す時間はなくレースでぶっつけ本番のスタートになるが、効果を試す最後のチャンスでもあり、セットアップ変更を頼んだのだ。

 迎えたサンデーレース決勝。6番グリッドからローンチスタートを決めるが、またもや前方車両がストール。よけながら順位を守ってレースは進行した。

 サタデーレース優勝の井上恵一選手(アウディRS3LMS)、同2位の佐藤潤選手(ゴルフTCR)とバトルをしながら、6位フィニッシュ。終盤5位の佐藤選手に詰め寄ることができたのは大きな収穫だった。ジオメトリー変更で最終コーナー立ち上がり加速時などフロントがリフトして荷重が抜けるのを抑えられ、摩耗したタイヤでもトラクションが稼げたのがうまく作用した。

 リヤのアンチリフトも1コーナーでのブレーキング時の安定性が高まり、130mでの制動を安定させることができた。スリップストリームも有効に使え、250km/h弱に最高速度も引き出せたのだった。

 ようやく闘える目処がついたところで、今回の参戦は終了。また機会があれば、この状態をベースにさらにセットアップを煮詰めていきたいと思った。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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