GR! ニスモ! モデューロX! 「儲からない」のに突如国産メーカーが「走り」にこだわるワケ (1/2ページ)

トヨタは最後に手元に残るのはスポーツカーと名言!

 トヨタの「GR」(GR SPORT)に日産の「ニスモ」、そしてホンダの「モデューロX」。昨今、通常のモデルに手を加えつつ、ディーラーで普通に購入可能な、走りのポテンシャルを高めたメーカー謹製のカスタマイズカーが増えている。果たして、そこにはどんな背景があるのだろうか。

 そういった商品が生み出される背景は、一般論としてシンプルに考えれば「それを求めている層がいるから」ということになる。しかし、それらのモデルは一定のニーズを得ているものの、かつてのホンダの「Type R」や三菱の「ランエボ」シリーズのように爆発的に売れているかといえば、決してそうとは言いがたいだろう。「アクアGRスポーツ」などそれなりに台数の出ているモデルもあるが、あくまでもニッチ的な商品だ。

 いま、スポーツカービジネスは冬の時代を迎えている。かつてほど販売台数が見込めず、それを反映してメルセデス・ベンツがかつて大ヒットした「SLK」を廃止し、アウディは「TT」の次期モデルを作る予定がないと報道されているほど。日本車を見回しても、かつてに比べてスポーツモデルのラインアップが減っていることに気が付いている人も多いはずだ。

 そんななか、走りを重視した“特別なモデル”をリリースする背景は、何かがあると考えるのが自然である。

「(移動手段だった)馬がクルマに代わっても、今なお競走馬は残っている。クルマも同じで、最後にオーナーのもとに残るクルマはスポーツカー」と、かつてトヨタ自動車の豊田章男社長は語った。カーシェアリングなどで環境が変わって個人所有が減ると思われている将来、オーナーが最後まで手元に置くクルマはスポーツカーだと考えているのだ。そのために、スポーツカーをしっかり育てる必要があるという。

「台数も大事です。収益も大事です。でも私は、『台数、収益がすごいですね』『大きいですね』『大企業ですね』とほめられるよりは『いいクルマ作ってますね』『いい人材いますね』といってほめられる会社になりたいんですよ」(スープラデビュー時のトヨタイムズの記事より)。

「もっといいクルマを作りたい」「もっといいクルマを作るためのノウハウと人材を育てたい」。それが、トヨタがスポーツモデルを用意する理由と言ってよさそうだ。

 また、最近のトヨタは「クルマは単なる便利な道具」という白物家電的な考え方から脱却を図ろうと模索している。魅力ある商品には「背景にあるストーリー」や「ワクワクドキドキさせる要素」「夢を追うこと」が大切と考えていることが伺えるのだ。その一環として、走りを磨いたモデルを用意している。

 さらにその延長線上には夢を与えるモータースポーツ活動があり、トヨタはいま、もっとも積極的にモータースポーツをおこなっている自動車メーカーのひとついえるだろう。


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