空飛ぶクルマより「徒歩」や「自転車」の安全&利便性向上が鍵! 未来の交通社会のあるべき姿とは (1/2ページ)

人間が人間であることからは離れられない

 未来の交通社会というと、空飛ぶクルマが現われ、これまでと全く違う移動の姿になっていくと思いがちだ。それもあるかもしれない。しかし一方で、人間がなお、重力を持つ地球上の動物の一種であるとするならば、体を動かすことを減らしたり止めたりしたら、健康を損なうようになっていくだろう。

 どのように移動手段が発達しても、自分の体を動かすことによる移動をいかに快適に残すかが、未来の交通形態の要になると思う。基本は、まず歩くことであり、次に自転車を安全に活用できることだ。100年ほど前までまだ存在した乗馬は、移動を歩くより速くするとともに健康にも役立つものだった。

 自動運転を目指した運転支援機能の開発において、歩行者の安全を確保するのはもちろん、自転車の存在も判別できるカメラ機能が進化している。当初は、反射板などを装備した自転車しか認識できなかったが、今日ではほぼ問題なく自転車を認識できるようになってきた。歩行者や自転車を認識し、その安全を守れる自動運転が普及することがクルマの進化の上で重要だといえる。同時にまた、歩行者と自転車がより安全で快適に移動の役に立つ道路環境の整備も不可欠だ。

 現在の日本のように、自転車は車道を走ることを前提としながら、歩道も走ることもできるとする折衷案は、決して正しい方向ではない。結局、自転車が歩道を高い速度で走ることを現実的には許している。高齢化社会を迎え、同時にまた子育ての支援にも目が向けられる今日、歩道を年配者や子供が安心して歩けない国など、先進国とはいえないだろう。

 人口の密集が江戸時代から続く日本で、適正な道路環境の整備は容易でない。だが、明確な方針の下で正しい道路環境を整備していくことが、国と自治体に求められる。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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