世界に名だたる「ドライバー殺し」の難道路! 初心者は一生抜け出せない無限地獄「凱旋門」のランナバウトとは (1/2ページ)

観光客が驚愕するほどのカオスっぷり!

 あそこがカオスだというのは割と世界共通の認識らしい。凱旋門のてっぺんに登ると、下界のクルマの流れを見ながら欧米人観光客も「Oh!」とか「Wow!」を連発している。よくもまぁブツからないのが信じられない、といった調子だ。ちょっと大袈裟な見出しに思われるだろうが、フランス・パリのあの広場は公式にはシャルル・ド・ゴール-エトワールといって、第二次大戦時の功労者で第五共和国初代大統領だった将軍の名に「星」という単語が組み合わされているとおり、360度周囲に12本の大通りが放射状に繋がっている。凱旋門はナポレオンが建造を命じたものの、死後に完成したので本人はその姿を見ていない。そんないわくつきの場所を、各方向から集まってきた車列がひとつの輪になって、グルグル回っては好き好きの方向へ散っていくのだ。

 アフターコロナの世界では、おそらく海外旅行でもクルマ移動が多くなるだろうし、パリでステアリングを握って凱旋門を通過することになっても、動じないためのあれこれを書きとめておこう。

 以前なら、交通量の一番多い3時方向のシャンゼリゼ通りから9時方向のグランダルメ通りへ抜けるには、地下トンネルをくぐってランナバウトを避けられたのだが、テロ対策が厳しくなった頃に地下に爆弾でも仕掛けられたら大変と、閉鎖されてしまった。しかもクルマに冷たいパリ市行政のおかげもあって、ここ数年でカオスには磨きがかかっている。ちなみにパスポートを盗まれたり無くしたら世話になる、在仏日本大使館は凱旋門から1時方向、オッシュ通りを下ったところにある。

 凱旋門ランナバウトは無秩序天国のようで、当のフランス人たちは意外と運転を楽しんでいたりする。無論、あそこを通るのが嫌いなフランス人もいるし、在仏邦人で運転をしている人でも苦手という人は少なくない。ああ見えて最低限のルールというか、秩序は存在する。いちばんの大原則は、クルマが右側通行のフランスや欧州大陸の道交法で一般的な「プリオリテ・ア・ドロワット(右側優先)」だ。これは右から来たクルマが優先で、左側のクルマは譲らなければならない、

 具体的にどういう状況かといえば、反対車線をまたいで曲がる時(日本とは逆で左折)、あるいは路面に描かれた鎖線を自分が踏み越える際は、つねに相手に優先権がある。他にも、高速の合流や、T字路で左折する際もそうだ。一時停止と違って優先されるべきクルマがいなければ、できるだけ止まるべからず、というのがあちらの考え方だ。ランナバウトの入口も同じくで一時停止の義務はないが、右側優先の原則からすると例外で、先に反時計回りの周回に入っているクルマが優先(=左側優先)となる。だから円周内の流れが切れた時に、スッと進入すればいい。それが通常のランナバウトの走り方だ。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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