ユーザーのためにもターボ化はなし! GR86&BRZがNAのまま排気量拡大でパワーアップを図ったワケ (2/2ページ)

ユーザーのことを考えたフルモデルチェンジだ

 さらにいえば4WDも無理だ。水平対向エンジンは低くてワイドだから、前輪へ駆動力を伝えるパワートレインが収まらない。4WDを成立させるには、ほかのスバル車のように、エンジンの搭載位置を前側に寄せる必要が生じる。そうなるとフロントオーバーハング(ボディが前輪よりも前側に張り出した部分)が大幅に長くなり、ボディスタイルが根本的に変わってしまう。前後輪の重量配分でも前輪側が重くなる。

 そして次期GR86&BRZは、従来型のプラットフォームを使うため、大幅な設計変更はできない。そのためにエンジンに関しても、排気量の拡大に留めた。この方法であれば、最小限度の変更で動力性能を高められる。

 次期型の最高出力は235馬力(7000回転)、最大トルクは25.5kg-m(3700回転)とされるから、現行型に6速MTを組み合わせた207馬力(7000回転)・21.6kg-m(6400〜6800回転)に比べると、実用回転域の駆動力が向上する。車両重量とのバランスを落とさずに、排気量を拡大させて、なおかつエンジンの負荷が軽減されるから実用燃費も少し改善される可能性がある。

 燃費を大幅に向上させるには、ハイブリッドの採用なども含めて大幅な変更が必要だが、従来型のプラットフォームを使ってそれを行うのは難しい。そこで次期型は、従来型の延長線上で改善を行う。

 基本的なメカニズムを変更しない排気量の拡大であれば、従来型の特徴だった吹き上がりの良さも損なわれない。従来型から乗り替えるユーザーにも馴染みやすく、おそらく足まわりなどのチューニングパーツも、同様のタイプを継続的に使えるだろう。

 GR86&BRZのようなスポーツカーでは、購入後の楽しみ方まで視野に入れて開発を行う。次期型は従来型の路線で進化させ、将来的にはその次のモデルで、電動化も含めて商品力を刷新させる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
-

新着情報