基本は同じでも「走り」が全然違う! メーカー違いの「兄弟車」に「個性の違い」が出る理由 (3/3ページ)

基本コンポーネントは同じでも装備を見れば価格差大なモデルも

 今夏、もっとも新しい兄弟車の2台が、VWゴルフ8とアウディA3だ。プラットフォームはどちらもMQBであり、マイルドハイブリッドの1リッター3気筒ターボエンジンを採用するあたりも変わらない。ミッションもともに7速の2ペダルセミオートマだ(VWはDSG、アウディはSトロニックと称する)。もっとも、ボディサイズは微妙に異なり、A3のほうが全長、全幅ともに大きく、しかし全高は低いプロポーションをとる。

 が、いわゆる大衆車ブランドのVWとプレミアムブランドのアウディで、走りのテイストが同じはずもない。1リッターターボモデル比較では、ゴルフは16インチタイヤ、A3の1st editionはなんと18インチタイヤを履いていたりする(標準は17インチ)。

 A3はなるほど、プレミアムブランドのコンパクトカーらしく、より静かで滑らかな走りを見せる。が、アウディ一流の内外装、乗り味の上質感に対して、1リッターターボエンジンでは物足りなく感じてしまうかもしれない。できれば2リッター直4ターボエンジンを積むモデル(40TFSI)で、プレミアム感を堪能したいと思わせる。その点、ゴルフなら1リッターターボエンジンでも、軽やかな中にゴルフならではの高い質感を持つ走りに満足でき、また、世界基準のベーシックカーとして相応しいと思えるのも本当だ(ゴルフ7の走りの質感に近いのは1.5リッターターボ+17インチタイヤだが)。

 ちなみに、価格はアウディA3スポーツバックでもっとも安い30TFSI(110馬力、16インチタイヤ)が310万円。ゴルフ8で下から2番目のグレードとなる実質的なベースグレードのゴルフe TSI Active(110馬力、16インチタイヤ)は312.5万円。おやおや、ほぼいっしょじゃないか? と思ってしまうのだが、さにあらず。A3の場合、ゴルフに全車標準装備されるACC(アダプティブクルーズコントロール)などが47万円のセットオプションとなり、純正ナビゲーションの価格も高く、ボディカラーもほとんどが有償となるため、ならしてみると、じつはけっこうな価格差があったりする。

 もちろん、内外装、走行性能を含め、A3にアウディならではのプレミアムブランドとしての誇り、プレミアム感の演出があるのは当然で、そうでなければそうした値付けが正当化されるはずもない。ただ、両車を同時に乗り比べなければ、最新のゴルフは国産コンパクトカーと一線を画す、先進性、商品性を味わえ、満足できるのも本当だ。そのあたりは、兄弟車でも、走りの味付けの違い(個性)がメインとなるスープラとZ4、BRZと86との比較と異なる点と言っていい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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