全部セダンじゃなかった! クルマ好きでも曖昧な「セダン」「4ドアクーペ」「4ドアハードトップ」って何が違う? (2/2ページ)

かつては「4ドアハードトップ」の国産名車も誕生

 ところで、箱型の4ドアながら、セダンとは呼ばれずに、4ドアハードトップと称されるクルマがある。国産車ではもはや絶滅危惧種だが、かつてはトヨタ・クラウンやマークII、チェイサー、クレスタにハードトップモデルが存在し、ハイソカーブームの頃には、若い世代に向けたスタイリッシュな4ドアモデルのトヨタ・カリーナED(全高1300mmちょっとと低全高なのも特徴)が一世を風靡したこともある(流行したのは1980~1990年代初頭)。

 カリーナEDの対抗車として登場したマツダのペルソナに至っては、カペラをベースにした4ドアハードトップだったのだが、女優イングリッド・バーグマンをイメージ!? したというインテリアの一流ホテルやラウンジを思わせるソファ感覚の豪華絢爛な仕立て(本革シート仕様)に弩肝を抜かされたものだった。が、カリーナEDの大ヒットとは違い、1代限りの短命に終わっている。

  

 4ドアハードトップが、セダンの全高を低めただけならば、低全高セダンと呼んでもいいところだが、ハードトップは独自の構造を持つため、セダンとは分類しなければならない。それは、セダンなら前後ドアのウインドウ部分にサッシュ=窓枠とセンターピラー=Bピラーが付いているのに対して、ハードトップはサッシュ=窓枠、そしてセンターピラー=Bピラーが付いていないのが特徴となるからだ。

 だからハードトップの前後ドアのウインドウを全開にすると、窓枠やピラーがないため、大きな開口部が出現し、解放感が得られるのが魅力。停車時にドアを開けた際も、ウインドウガラスの上部はガラスだけの状態になるわけだ。ただし、Bピラーを目立たないように付けているハードトップモデルもあったりする。その呼び名はピラードハードトップとなる。

 ただし、筆者は4ドアハードトップのカリーナEDを所有していたことがあるのだが、前席はともかく、後席の乗り降り、居住性はセダンと別物で、スタイリッシュさと引き換えに、とくに乗降時、乗車時の頭上方向の窮屈さを感じたものだった。当時としては、前席優先のデートカーとしてブレークしていたと思われる。

 そんなハードトップが今、見られなくなった背景には、衝突安全性やボディ剛性の確保がある。Bピラーレス、サイドウインドウにサッシュ=窓枠がない構造だと、どうしても側面衝突での安全性やボディ剛性で劣ってしまい、今日の厳しい安全基準になかなか対応できず、高いボディ剛性がもたらす走りの質も上げられないからである。ただし、ドイツ車などの輸入車には、依然として4ドアハードトップモデルが存在する。Bピラー&サッシュレスの問題点を解決しているということだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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