日本のホンダファン軽視が原因? 「2代目NSX」が初代のような「伝説の名車」になれず短命に終わったワケ (2/2ページ)

日本ではホンダファンのおかげで成功していた?

 そして現行NSXの生産と販売計画は、1年間に1500台で、国内向けはこの内の100台とされていた。しかし、実際の生産累計は、2021年の時点で2558台だ。日本国内の登録台数は、この内の464台になる。

 仮に計画どおりなら、約5年間の生産累計は7500台で、国内の登録台数は500台になるはずであった。このように見ると、日本では464台を登録したから販売計画に近いが、海外では圧倒的に少ない。価格の高いプレミアムな高性能スポーツカーは、当然ながらブランドが大切で、ホンダでは共感を得るのは難しい。従来型からの乗り替え需要も期待できない。フェアレディZのように、性能やデザインが魅力的なスポーツカーを割安な価格で提供するなら喜ばれるが、高価格車は日本のメーカーでは難しい。

 同様のことは国内市場にも当てはまるが、ホンダは日本のメーカーだから、ホンダファンも海外より多い。そのためにブランド力も高く、海外に比べれば堅調に売れた。

 ちなみに既に販売を終えたNSXの価格は2420万円で、同じ価格帯には、メルセデスベンツAMGクーペGTR(2453万円)、BMW・M8クーペコンペティション(2474万円)、ポルシェ911ターボ(2500万円)などがある。日本でもホンダはこれらのライバル車に比べてブランド力は低いが、少なくとも動力性能では負けていない。ハイブリッドの採用は、ホンダとNSX特有の先進性だ。この魅力を理解できるのは日本のユーザーで、少ないながらも計画台数に近い売れ行きを達成できた。

 結局のところ、NSXが失敗した根本原因は、海外が1年間に1500台、日本は100台という販売計画台数の格差だ。もっと日本のNSXファン、あるいはホンダファンに買ってもらうことを考えていれば、ここまでの失敗には至らなかった。ホンダは日本のユーザーを軽く見るべきではなかった。これは今のホンダが抱えるさまざまな問題の原因にもなっている。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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