空前のSUVブームにドンピシャ……のハズがなぜか売れない残念なSUV3選 (2/2ページ)

以前は結構売れたはずだったのだが、ライバルの多い市場では目立てず

2)ホンダCR-V

 CR-Vは一度国内販売を終了したが、2018年に復活した。開発者は「ヴェゼルの人気が高く、CR-Vは廃止したが、その後にSUVの人気が予想以上に盛り上がった。オデッセイのお客様がSUVに乗り替える時など、コンパクトなヴェゼルでは物足りないのでCR-Vの国内販売を再開した」と語った。

 しかし売れ行きは伸び悩む。販売を再開した時の販売計画は1カ月当たり1200台とされたが、今の1カ月平均は400台以下だ。

 販売不振の理由は、まず価格が高いこと。カーナビなどを標準装着して装備を充実させたが、それでも1.5リッターターボを搭載するもっとも安価なEX・2WDが336万1600円だ。最上級のe:HEV(ハイブリッド)EXマスターピース4WDは447万400円に達する。

 CR-Vはこのように価格が高いのに内装の質は低い。インパネなどのステッチ(縫い目)は、先代ヴェゼルでも本物の糸を使っていたが、CR-Vは樹脂で成形された模造品だ。これでは割高な印象が一層強まってしまい売れ行きを下げた。

3)マツダMX-30

 MX-30はCX-30とプラットフォームを共通化したSUVだが、観音開きのドアを採用する。外観は水平基調で視界が優れ、内装にはコルクを使うなど、リラックスできる雰囲気だ。そこにマイルドハイブリッドと、電気自動車のユニットを組み合わせる。

 MX-30を開発した本当のねらいは「魂動デザイン」による躍動的な外観、スポーティな運転感覚に興味を示さないユーザーを取り込むことだ。先代CX-5以降のマツダ車は、クルマ作りが硬直化して「どれも同じに見える」という指摘も多い。マツダが女性を対象に調査したところ、コンパクトカーのマツダ2(旧デミオ)についても「スポーツカーみたいで私には運転できない」という意見が聞かれた。

 これではユーザー層が広がらないので、対称的な価値観を備えるMX-30を開発したわけだ。

 このMX-30のコンセプトは、今のマツダの現状を反映したもので理解できるが、肝心のクルマ作りで失敗した。CX-30とほぼ同じサイズで、観音開きのドアなどを採用するから魅力がわかりにくい。

 マツダのホームページにおける訴求も、掲載色をホワイトのセラミックメタリックにすれば良いのに、相変わらずのソウルレッドだから、CX-30やほかのマツダ車との違いが一層わかりにくくなっている。「CX-30に似たワケのわからないクルマ」と受け取られ、発売時の販売計画は1カ月当たり1000台だったのに、実際の売れ行きは550台程度だ。ロードスターと同程度になる。

 従来のマツダ車とは違う新しいシリーズであることを表現するなら、マツダ2のプラットフォームを使い、2代目デミオコージー、あるいはキューブのような馴染みやすく空間効率の優れたクルマを作るべきだった。そこまでやらないと、今のマツダの硬直化したブランドイメージを突き崩すのは難しい。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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