なぜそこまでEV化が必要? 迫る地球環境の「危機」に日本のお家芸「ハイブリッド車」も消える可能性 (2/2ページ)

今のままだと食料や水にも懸念が生じて生きることが苦難となる

 メーカーの意思だけでなく、消費者の意識も変化していかなければ、HV比率はある段階で頭打ちになる。
米国や中国は、電気自動車(EV)の強制導入という規制を行っている。新車販売のうち何パーセントかをEVにしなければならない内容で、年を追うごとにEV比率が高まっていく。当面は、EVのなかにプラグインハイブリッド車(PHEV)も含む移行期間がある。

 そのうえで、世界的にエンジン車の販売禁止の方向性が打ち出されている。ただし、PHEVはモーター走行に加えハイブリッド走行も併用するので、PHEVの扱いをどうするかは必ずしもまだ明確ではない。

 一方、HVは、走行するため必ずエンジンが必要になるので、エンジン車販売禁止にあてはまる可能性が高いだろう。

 いずれにしても、今日にでもCO2ゼロにしなければならない自然災害の甚大化が迫っている。それは大気の温度上昇にとどまらず、海水温度もあがってしまったためだ。したがって欧州ではCO2排出をゼロにしても、この先30年は気候変動が収まらないと見る動きもある。もはやHVの次元を超え、全面的なEV化を果たせるかどうかが未来の暮らしを左右することになる。

 すでにアラスカなど永久凍土が融けはじめており、シベリアには永久凍土の下に大量のメタンがある。メタンガスはCO2の数十倍の温室効果があり、万が一メタンが大気中に放出されだしたら、いまの気象状況でさえ保てなくなると思うべきである。

 となると、食料や水にも懸念が生じ、生きることさえ苦難の時代を迎えることになりかねない。すでに生産量の減った小麦が値上がりし、野菜の品質が落ち、漁獲量の変動が激しくなっている。米国では、牛が吐き出すメタンの量を減らす取り組みもはじめられているほどだ。じつは水田も、メタンを発生させている。

 CO2排出量を少しでも抑えることは世界的にも急務となっているのだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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