悪路系4WD車は「2or4駆を切り替えるパートタイム」! スポーツ&実用車は「常時4WDのフルタイム」! 2種が存在する理由とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■4WDにはフルタイムとパートタイムが存在する

■悪路系のクロカンSUVにパートタイムが採用されるケースが多い

■それぞれのメリット・デメリットについて解説する

日常使用において4WDを必要とするケースは少ない

 パートタイムとフルタイム、4WDには2つの方式があることはよく知られている。この両者は、概ねパートタイム方式がヘビーデューティなクロカン4WD、フルタイム方式がSUVや乗用車型4WDで採用される傾向にある。では、どうして2つの方式が存在するのか、その理由を考えてみたい。

 もともと4WDは、第2次世界大戦中のウイリス社のジープがその発端で、通常は2WD駆動(FR方式)でなんら問題ないが、低μ路や不整地では4つのタイヤを駆動する4輪駆動でないと走破できないことから、機械的な切り替え機構(トランスファー)を使い、前輪にも駆動力を伝える方式としたものがパートタイム方式である。この方式は、前後に最大の駆動力を伝達できる反面、コーナリング中に生ずる前後輪の回転差を吸収できず、ギクシャクとしたコーナリングブレーキ現象を発生させてしまう特徴がある。

 一方、フルタイム方式は、常時4輪駆動で走ることを前提とした方式で、パートタイム式が持っていた不具合、前後輪の回転差を吸収するセンターデフを装備。4つのタイヤを駆動して走るスタビリティの高さに着目し、パートタイム式が4WDで走る場合に生じるギクシャク感を払拭した方式である。乗用車用としてフルタイム4WDの優位性を謳ったのはアウディで、降雨の中、アウトバーンを一糸乱れず直進するCMは、フルタイム4WDの全天候性を強調したもので今も記憶に新鮮である。

 ドライバーが意識しなくても、車両そのものが持つスタビリティ(安定性)が高く、安全性に優れた駆動方式であることをアウディは提案。日本のスバルもまったく同様の考えを持ち、1980年代からフルタイム4WDを自社の標準駆動方式として拡充を図っていた。最大の課題はセンターデフの処理だったが、通常のデフ機構をセンターデフとして採用すると、前後輪の接地状態によっては駆動力がまったく伝わらない、0輪駆動の状態に陥る可能性があった。

 もちろん、それを見越して前後デフやセンターデフに制御装置(LSD)を設ける対応手法も採られ、通常の2輪駆動方式と変わらぬ操縦感覚を確保しながら、4WD方式が持つ高い走破性、安定性を最大限活かす車両作りが試みられてきた。

 こうした意味では、安定性が高い全天候型の駆動方式として、乗用車やSUVの多くに採用されるフルタイム4WD方式は、必要に応じて駆動方式を切り替えるパートタイム式と比べてはるかに実用性は優れたが、では、走行環境によって駆動方式を切り替えなければならないパートタイム式は、4WD車の駆動方式として劣っているのかという疑問に対しては、まったくそうではない、と言うことができる。

 日常の走行モードを想い描いてほしいのだが、FF車やFR車では走行困難なケースがどれほどあるだろうか? 泥濘路、深い積雪路など、たしかに4WDでなれば走行困難な路面状態も想定できるが、日常生活で遭遇する道路環境は、2WD方式でも問題なく走ることができる。むしろ、車両重量が軽く、前後輪のいずれかを駆動する2WD方式は、ハンドリングの自由度が高く、操縦性の点では優れる場合が多い。

 パートタイム4WD方式は、通常は2WDの軽快(というより重苦しくない)なハンドリングで移動し、非常時のみ4WD化することで、その高い走破力によって低μ路やラフロードを走破できる特徴がある。そして、パートタイム式4WDは、前後間にデフを介さず、エンジン動力を直接前後に配分するため(ゆえに直結式と呼ばれる)、駆動ロスがなく最大の駆動力(その大半が前後50対50の駆動力配分)を発揮することができる。


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