悪路系4WD車は「2or4駆を切り替えるパートタイム」! スポーツ&実用車は「常時4WDのフルタイム」! 2種が存在する理由とは (2/2ページ)

フルタイム4WDのなかにもさまざまな方式がある

 フルタイム式とパートタイム式、いずれが優れた駆動方式であるかというより、車両の使用環境がどうであるかに左右される問題だと考えてよい。通常の操縦性、操縦感覚を持ちながら、4WD方式が持つ高い駆動力、それが生み出すスタビリティの高さを活かして走るフルタイム式は、まさに安全性の高い生活4駆という言い方ができ、非常時に圧倒的に高い駆動力を活かして低μ路やラフロードを走破できるパートタイム式は、本格的な悪路走破車、つまりクロカン4WDに最適な駆動方式と言うことができる。

 なお、常時4WDで走るフルタイム4WD方式は、2WD方式と比べて燃費や騒音の点で不利になるが、燃費対策、騒音対策を施すことで、実用車の視点から2WDと較べて目立つほどの違和感はまったく感じられない。

 ちなみに、基本的にはフルタイム方式ながら、2WDと同等のハンドリング特性やパートタイム4WD方式の前後直結による高い駆動力特性の実現を図り、技術の粋を投入したフルタイム4WD方式も実現されてきた。

 スカイラインGT-RがR32の時代から採用してきたアテーサE-TSの方式は、通常はFR方式(前後駆動力配分0対100)で走りながら、後輪駆動力がロス(スリップ)した分を自動的に前輪に伝達。最大前後50対50の駆動力配分とする方式で、舗装路面での絶対スピードを意図したGT-Rらしいハンドリングの自由度と駆動力コントロールを図る4WD方式だった。

 三菱がグループAラリーカー(WRC用車)で開発し、ランサー・エボリューションⅦ以降で市販化したアクティブセンターデフ方式は、常時前後直結状態で走り、旋回初期にセンターデフの拘束を解除、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)機構との併用により、旋回性能の向上と回頭性を確保する方式として考案された。前後駆動力配分は50対50で固定。ラリーカーとして、伝達ロスがない最強の駆動力配分である。

 今後、自動車のEV化が加速し、1輪あたり1個のモーターを有する車両が開発されれば、電動方式、電子制御方式のメリットを生かし、4輪独立の駆動力配分が可能となることで最強の4WDシステムが実現しそうな気配だが、現状の内燃機関による4WD方式も、使用用途に応じてユーティリティの高い方式が実用化されている。4WD方式の選択は、自分の使用環境に応じたものを選ぶ時代である。


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