「買う」も「売る」もじつは大変! 話題のクルマの「オンライン販売」の現実 (2/2ページ)

オンラインのみでの完結は無理がありそうだ

 また初めて、しかもオンライン上でしか接していないお客に対し、思い切った値引き提示はできないとのこと。「いままで会えなかったような、新しいお客に会える」と前向きにとらえるセールスマンもいるが、「オンライン商談はやっていません」とハッキリ言ってくるディーラーも少なくない。

 オンライン商談でさえ抵抗があるのに、オンライン販売になんの抵抗もないわけがないのが正直な話。常識的に考えれば、オンライン販売は“無店舗販売”となるのだから、そこで購入するのが一番お得でなければならない。自動車保険におけるダイレクト保険がその好例となるだろう。ただ、それを行なえばメーカー自らが“投げ売り”を助長することにもなりかねない。

 トヨタの個人向けカーリース“KINTO”では、「いま申し込めば、オプションのパールホワイトカラーが無料になる」といった、オンラインならではの特典をウリにしている。KINTOでは、一般ディーラー向けと生産枠が分かれており、ディーラー向けでは2022年2月以降生産開始予定のカローラ クロスのSグレードもKINTO枠ではすでに生産を行っており、いまのところは事実上“KINTOだけで選べるグレード”となっており、納車も当然ディーラーで買うより早くなるだろう。

 KINTOで選べる車種の生産枠はKINTO専用枠で生産されるので、現状の深刻な納期遅延が解消されるまでは、若干でも納期が早まるのならば、それだけでも“特典”となるだろう。さらに、オンライン販売ならではのオリジナルでお得感のあるモデルを販売するというのも、ディーラーとの“棲み分け”がはっきりするのではなかろうか。

 販売現場では、ディーラーが納車窓口とメンテナンスセンターに半ば特化したものとなってしまうのではないかとの不安の声もある。「自分たちで販売していないお客様でメンテナンスだけの利用となると、“メンテナンスのお客様”というくくりになり、店舗で購入していただいたお客様は“ウチのお客様”といったものとなるそうです。基本的な接客やサービスに差が出ることはありませんが、“プラスアルファ”面では大きな差が出るそうです。販売担当したセールスマンがいれば、そのセールスマンがいろいろと世話をやいてくれるので、その部分では差が出てくるようです」とは事情通。

 “スマホで手間なしで買える”としても、世代が若いほどクルマへの興味は全般で見れば薄まる一方で、都市部では「必要ない」との意見がよりスタンダードなものとなるだろう。そのような世代を“スマホで簡単”だけで画面を開かせるところまでもってくるのはかなり無理がありそうだ。まずは自社のクルマを知ってもらうことが必要となるだろう。そうなれば、試乗も充実した“プチモーターショー”の全国的な展開など、自社製品に触ってもらい魅力を知ってもらう必要がある(それか新車購入についてクーリングオフを認めるしかないだろう)。

 アメリカや中国ではオンラインを活用した新車購入が日本より普及しているが、アメリカでは全州、中国では全省で中国の一部を除けば、毎年モーターショーが開催されており、そこで実車チェックが積極的に行われている。“スマホならお手軽に売れるだろう”と思っていたら大間違い。アナログの世界でしっかり汗をかかなければ、オンラインが新車販売に有効なツールとなるのはかなり厳しいものになるだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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