「クルマを運転しているだけでしょ?」は大間違い! トップレーシングドライバーに「人間の能力」を直撃した (1/2ページ)

この記事をまとめると

◼︎レーシングドライバーはマシンを使うので他のスポーツと比べると人間が目立たない

◼︎スーパーGTを走るドライバーに普段のトレーニング内容などに関するインタビューを敢行

◼︎動体視力や平衡感覚は一級品というデータがある

レーシングドライバーに必要なのは身体能力の高さだけではない

 マシンを使用してタイムや順位を競うモータースポーツでは、ほかのスポーツ以上に道具である“マシン”に注目が集まりがちだが、あくまでもモータースポーツはマシンを使ったヒューマンスポーツだ。それゆえに、どんなに優れたマシンを持っていたとしても必ず競技で勝てるわけではなく、ドライビングテクニックやフィジカル、メンタルなどドライバーのパフォーマンスがリザルトを左右する。

 つまり、モータースポーツを戦うドライバーもアスリートであり、野球やサッカー、陸上競技など他のジャンルと同様にスポーツ選手といえるのだが、果たしてレーシングドライバーにはどのような素質が求められるのだろうか?

 というわけで、2021年のスーパーGTのGT500クラスで活躍したトップドライバーたちに直撃してみると、なかなか興味深い答えが返ってきた。

「ほかの競技と違ってモータースポーツは練習があまりできませんよね。極端に少ない練習時間のなか、本番では100%の力を発揮しなければならない。そういった意味では“読み”が重要になってくると思います。運も影響してきますが、少ない情報やチームメイトのコメントから想像して“いま、クルマはこういう状況なんじゃないか”とか、朝の練習走行のフィーリングから“午後の路面はこうなっていると思うから、こうしたほうがいいんじゃないか”とかを予想する。その結果はコーナーに飛び込んだときにわかるんですけど、やはり、読みのうまさがドライバーには重要になってくると思います」。

 そう語るのが、TGR TEAM SARDで39号車「DENSO KOBEKCO SARD GR Supra」のステアリングを握る中山雄一選手だ。

 気になるフィジカル面については、「ステップアップするにしたがって、どんどんスピードが速くなっていくので、自分をシートの真ん中に支えていくことが大変になってきます。というのも、クルマが数ミリしか動いていないのに、自分が数センチも動くと、反応が分からなくなってしまいますよね。そうならないためにも体幹が強くないといけない」とのこと。

 その一方で、「そうはいっても、意外と脱力していてもドライビングはできるんですよね。ブレーキもそこまで重いわけではないし、ずっとマックスの負荷がかかった状態でドライビングするわけでもない。心拍数でいえば160〜180bpmぐらいの間ぐらいで、1時間から1時間20分の間、コンスタントにパフォーマンスを発揮しなければならないので持久的な部分のほうが必要かもしれません」と語る。

 実際に中山選手は「僕は背が高くて、体重が重いので筋肉はつけられない。有酸素系のトレーニングを主にやっていますが、平地を走っていると飽きてくるので山に登ったりしています」とのことで、トップドライバーとして独自のトレーニングを実施しているのである。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

愛車
スバル・フォレスター
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登山
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