ターボもないし派生車だし「地味車」の部類! それでも「ワゴンRスマイル」がバカ売れする「素直な開発」という武器 (2/2ページ)

何でもかんでも全高が高ければいいというわけじゃなかった

 そしてワゴンRスマイルが好調に売られる理由は、ユーザーニーズに素直に応えた商品であるからだ。今の30歳以下のユーザーは、1990年代の中盤から急速に普及を開始したミニバンに親しんで育った。スライドドアを備える背の高いクルマが普通の存在で、2列シートの軽自動車にも同様の機能を求める。

 その結果、N-BOX、スペーシア、タント、ルークスなどのスーパーハイトワゴンが売れ行きを伸ばしたが、すべてのユーザーが全高を1700mm以上に高めたボディを必要とするわけでもない。「スライドドアは欲しいけれど、天井はもう少し低い方がいい」と考えるユーザーもいる。

 このニーズに最初に応えた軽自動車が、2016年に発売されたムーヴキャンバスだった。この販売も好調で、ムーヴ全体の約60%を占める。スズキの販売店は「スズキにはムーヴキャンバスみたいなクルマはないのか? という質問がお客様から多く寄せられた」という。ワゴンRスマイルの開発者は「ワゴンRのお客様にリサーチしたところ、約40%の方がスライドドアが欲しいと返答した」と述べた。このようなユーザーの要望に応じて、ワゴンRスマイルが開発されてヒット作になった。

 ワゴンRスマイルは、基本的にはスライドドアに親しんで育った比較的若い女性をターゲットにしているが、販売店では以下のように説明する。「ワゴンRスマイルは、意外に中高年齢層の男性も購入されている。子育てをしている時にミニバンを使い慣れると、もはや背の低いセダンには戻れないからだ。ワゴンRスマイルは、スペーシアほどの広さは必要ないが、適度な空間とスライドドアが欲しいお客様に刺さったようだ。その性別や年齢は幅広い」。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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