販売現場とかけ離れた国の認識に喝! 「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」に見える「暗い未来」 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■補正予算案に「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が盛り込まれた

■現状、補助対象となりそうなモデルは11車種

■補償だけでは不十分で社会システムを大きく変えていく必要もある

“蓄電池代わり”というBEVの売り込み文句に違和感も

 経済産業省が11月26日に発表したところによると、令和3年度補正予算案に「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」が盛り込まれたとのこと。

 注目すべきは、BEV(バッテリー電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)の購入費の一部が補助対象となっていること(ほかに超小型モビリティへの補助もあり)。対象は初度登録で自家用車両に限定されている。補助対象の開始時期は2021年(令和3年)11月26日以降に新車新規登録(登録車)又は新車新規検査届出(軽自動車)された自動車とされ、補助上限額はBEV(軽自動車を除く)上限60万円、軽BEV上限40万円、PHEV上限40万円、FCEV上限225万円となっている。

 ただし、車載コンセント(1500W/AC100V)から電力を取り出せる給電機能がある車両もしくは、外部給電器やV2H充放電設備を経由して電力を取り出せる車両ならば、BEVの上限が80万円、以下軽BEV上限50万円、PHEV上限50万円、FCEV上限250万円と補助上限額がアップする。これは地域で災害などが生じた場合、地域で可能な範囲で給電活動などに協力する可能性があるとの付帯要件のようなものがあるため。

 日本ではBEVとなると、必ずといっていいほど“災害時に備えて”という、蓄電池代わりとしても使えることがセットでアピールされる。筆者は個人的にはこれが、日本では「BEVはガソリン車に比べるとつまらないクルマ」というイメージを植え付けたり、クルマ自体を単なる“道具”として見下しているように見えてならず、なんとなく拒否反応を示す人も目立つように見える。BEVが電気を蓄えるのは、あくまで自走して移動するため。それなのにいつも“災害用非常電源”という言葉がセットにあれば、いつでも満充電にしておかなければならないことにもなりかねない。

 現状で街なかを走る内燃機関車でガソリンや軽油がいつでも満タンになっているクルマばかりではないはずだし、BEVも同じ。そもそもBEVには“満タン”という概念よりも、たとえば買い物の間の15分間などに充電し、つぎ足しながら乗るというほうが理想的との話も聞いたことがある。そもそも論として車両電動化のアプローチ自体が間違っているように見える。ただ、今回は補助金を予算案に盛り込むためには付帯要件として必要だったのかもしれないともいえるが、やはり災害時とセットでいつも普及を考えるのは話を複雑にしてしまっているように見えてならない。

 2020年12月に政府が2030年代半ばまでに、国内で販売する新車については電動車のみとし、ガソリン車の販売を禁止する目標を打ち出すとの報道が相次いだ。この時は今回の補助対象となるBEV、PHEV、FCEVのほかHEV(ハイブリッド車)も2030年代半ば以降も継続販売できるような報道であったが、今回の補助金ではHEVは対象外となっている。

 しかし、たとえばトヨタのHEVを見ると、多くがAC100V・1500Wのアクセサリーコンセントを持つだけではなく、非常時給電システムを備えている。昨年とは異なり、政府はHEVをクリーンエネルギー車として認めない方針へ転換したようにも見える。2030年代半ば、2035年にイギリスやEU(欧州連合)加盟国ではHEVすら販売禁止となる予定なので、この1年でさらに進んだ気候変動への世界的な感心の高まりが、うがった見方をすれば、日本でも2030年代半ばまでにHEVすら販売禁止にさせようとしているのかとも考えてしまう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

-

愛車
2019年式トヨタ・カローラ セダン S
趣味
乗りバス(路線バスに乗って小旅行すること)
好きな有名人
渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

新着情報