日本はHV大国なのにナゼ? 軽自動車に「本格ハイブリッド車」が存在しない理由 (2/2ページ)

軽自動車は一気にEVへ進むほうが道が拓ける!

 EVは、リチウムイオンバッテリーの原価は高い一方で、専用開発することにより、たとえば空調をエンジン車のまま利用するのではなく、暖房ではシートヒーターやハンドルヒーターを標準化することで、空調機器の性能を補うことができる可能性がある。たとえばトヨタのbZ4Xは、足もとの暖房に輻射熱を利用するようだ。

 冷房でも、室内の天井にサーキュレーターを装備することにより、室内の空気を積極的に循環させることによって空調機器を最大に稼働させなくても適切な快適温度が得られるかもしれない。アジアで販売される廉価な専用車では、原価の掛る空調を装備できなくても、サーキュレーターを活用する例がある。

 また、スマートフォンとの連携で、充電中にあらかじめ冷暖房を作動させ、初期の急速冷暖房性能が必要なくなる可能性もある。これにより、車載バッテリーの電力消費を抑えられる。

 単に一つの部品の機能向上や効率化だけでなく、総合的なエネルギー管理を導入することにより、エンジン車では当たり前と考えられてきた部品の性能や原価が覆されるかもしれない。そこに、部品メーカーの新たな事業も生まれる可能性がある。

 しかし、エンジンも使うHVでは、そこまで大胆な発想の転換は難しい。そして原価低減も、エンジン車で取り組んできた枠組みから抜け出すことが難しい。つまりHVとは、あくまでエンジン車の延長でしかない。1997年にHVを世界で最初に市販したトヨタも、25年近くを経てなおすべての新車をHVとすることに躊躇がある。

 軽自動車こそ、一気にEVへ進む方が道は拓けるのではないか。そこが、いま100年に一度の大変革といわれるゆえんでもある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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