3台のクルマを出すが失敗ともいわれる異業種合同プロジェクト「WiLL」!  よく考えるとトヨタの先見の明がスゴかった (2/2ページ)

未来のビジネスにトライした意味は大きい

 メカニズム的には、それぞれ既存モデル(ヴィッツやカローラなど)のFFプラットフォームを利用した派生機種といえるもので、個性的な内外装以外に見るべきものはないようにも感じるが、ビジネスとして見ると、いずれも先行したチャレンジがなされたことが印象的だ。

 たとえば、WiLL Viについていえば、秋冬コレクションとして新色を設定してみたり、2000年10月にはインターネット特別限定車を発売してみたりしている。いまでこそインターネットを利用した先行予約というのは当たり前のようになっているが、2000年の段階で、そうしたビジネスに挑戦したというのは、非常にはやいもので、そこでのリサーチがその後のネットビジネスにつながった部分はなきにしも非ずだろう。

 WiLL VSにおいても、1.8リッターエンジン+6速MTというマニアックなパワートレインのグレードを二度にわたり、インターネット限定販売を行なっているが、こうした売り方というのは、時代を先取りしていたのは間違いない。トヨタが怖いのは、こうしたチャレンジを他社に先駆けてシレッと実施してノウハウを手に入れているところで、WiLLプロジェクトへの参画はそうした面からも有益だったことだろう。

 さらにWiLLサイファでは「走行距離課金型リース」という新しいビジネスにもチャレンジしていた。コネクティッド技術の走りといえるG-BOOK端末から送られてくる走行データを元に、走ったぶんだけリース料金がかかるというビジネスモデルは、まさにCASE時代のコネクティッドとサブスクリプションを先取りしたアイディアだ。

 さらに車両に通信モジュールを標準装備したり、トラブル時に救助を手配できる仕組みを搭載していたりと、完全にコネクティッドのひな形といえる機能を備えていた。

 2002年の段階で、ここまでの仕組みをビジネス化していたことを思えば、いまのトヨタが進めるサブスクリプションサービスの背景には多くの知見が備わっていることがわかるだろう。まさにトヨタ恐るべしである。

 WiLLプロジェクトが終了した段階では、無駄金を使ったという批判もあったが、WiLLプロジェクトを新しいビジネスモデルのテストケースとして理解すれば、実際のビジネス以上の成果を上げたといえるだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報