クルマの名前は昔から「バック」だらけ! いったいどんな「バック」なのかまるっと解説 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ノッチバック、ハッチバックなど、クルマ用語には「●●バック」がいくつかある

■アウトバック、スポーツバック、クロスバックなど車種名につくことも

■それぞれの意味について解説する

クルマ用語には「バック」がつくものが多数!

「そういえば、ノッチバックって言葉、最近はほとんど聞きませんねぇ。キミの世代だと聞いたことなんかないでしょ? そもそもノッチって何なんですかねぇ……?」

 隣に座る若い女性スタッフに同意を求めたのは、ときどき仕事で御一緒する某代理店の担当氏だ。僕より少し若いけど、まぁ似たようないいオヤジである。クルマまわりの仕事をしてるのだから知ってるはずなのにあえて訊ねるということは、おそらく僕に説明させて若いスタッフに覚えてもらおうという魂胆でもあるのだろう。一緒にいることに慣れちゃった上司がクドクド説明してもまったく頭に残らなかったのに、初めて会った“その道のプロ”と紹介された人と話してすんなり覚えちゃった、なんて経験は僕にもある。

 なるほど。スチャラカに見えるオヤジだけど、意外やいい上司なのかも知れない。僕は話に乗ってあげることにした。以下、オヤジと僕の会話である。

「まぁ、ノッチバックって昔ながらの基本のカタチですからね。その基本が最初にあったうえで、ハッチバックだとかファストバックだとか、そういう言葉が生まれたわけで。クルマの基本といえば昔は四角っぽいセダンだったでしょ? 今でいうならトヨタのセンチュリーとか。スポーティなヤツだとアルファのジュリアとかもそうですけど。

 セダンって乗員のスペースであるキャビンと荷物を入れるラゲッジスペースがはっきりわかれてるじゃないですか。明確な段差があるわけです。ノッチ(notch)ってもともとは“刻み目”とか“切り込み”の意味で、転じて“段差”を示したりもする言葉。バック(back)は、まぁ“背中”とか“後部”ですよね。つまり、後ろに段差があるカタチをしてるから、ノッチバックなんですよ。これはドアの枚数に関係なくて、ノッチバックのセダンとかノッチバックのクーペとか、あえて分類するとそうなるわけです」

「なるほどね。解りやすいです。そうなると、ハッチバックっていうのは……」

「そうそう。後ろにハッチ(hatch)がついてるカタチのことですね。もともとは船の甲板とかの跳ね上げ式の出入り口を指してたみたいですけどね。まぁ後ろに荷物を出し入れするためのガバッと開くドアがあるクルマ、です。昔のトヨタはリフト(lift)する、つまり持ち上がるドアが備わってるってことなのか、リフトバックなんて呼んでましたけどね。

 セリカ・リフトバックとか、カローラ・リフトバックとか。まぁそれはそれとして、日本の軽自動車あたりは、ほとんどのクルマがハッチバックです。デイリーなクルマとしての利便性が高いですからね。だけどこれまた昔話だけど、どう見てもノッチバックの4ドアセダンなのにじつはハッチバックつきの5ドアだった、なんてクルマもありました。ダイハツ・アプローズっていうクルマなんですけどね。あれはイマイチよくわからなかった(笑)」

 オヤジがニコニコ笑っている隣で、若者女子は知らない車名が出るたびにスマホでチェックしてる。ちょっと嬉しくなってきた。再びオヤジが問う。

「でも、スポーティなクーペだったりすると、ハッチバックっていわずにファストバックっていわれることが多いですよね? どう違うんです?」


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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