恐るべき弱肉強食の世界! バカ売れジャンルがゆえに厳しい競争で「消えた」ミニバンたち (2/2ページ)

今では1台もミニバンがないメーカーも一時はミニバン大国だった

 ホンダの最上級ミニバンであったエリシオンも、今は昔の1台だ。ラグレイトの後継車として、大海原をいくクルーザーをコンセプトに2004年に登場。日本では2013年まで製造され、現在は2代目として、中国専売車となっている。思い出されるのは、2006年のマイナーチェンジで加わった、3.5リッターV6モデル(ハイオク仕様)。

 4輪ダブルウイッシュボーンサスペンション、300馬力というスペックからも、ホンダらしい走りの良さが伝わってくる。とはいえ、オデッセイ人気絶頂の頃であり、価格も含め、ホンダミニバンのメインストリームにはなり得なかった。

 今ではミニバンを持たないマツダも、かつては良質なミニバンを多数用意していた。MPVはマツダのミニバンとして1988年に登場。とくにLY系と呼ばれる、2006年登場の3代目は、マツダのフラッグシップミニバンとして、デザイン、居住性、そして走りに満足できた1台。

 ちなみに、ミニバン初のターボエンジンを積み、18インチタイヤを装着した23Tグレードは、しなやかな乗り心地とスポーティとも表現できる上質な操縦性を両立。2列目キャプテンシートのスーパーリラックスシートも用意されていた。中古車なら、完成度を高めた2008年1月以降のモデルが狙い目だ。

 そのMPVの弟分だったのが、プレマシー。初代は1999年のデビューで、2010年発売(~2018年)の3代目で消滅。両側スライドドアを備えながら、欧州車並みの走行性能、シートのかけ心地が自慢で、現在のマツダの実用車の走りの原点にある1台と言っていい。2011年からは日産ラフェスタとしてOEM供給していた。

 ちなみにMPVとプレマシーの中間には、08年デビューのビアンテもあったが、デザインを含め、いまひとつの人気で、2008年から2018年までの1代で消滅した。

 これまた、今ではミニバンを用意していないスバルにも、かつてはエクシーガ、そしてオペル・ザフィーラのOEM車となるスバル・トラヴィックが存在した。エクシーガは08年にデビューした、スバル初の独自開発ミニバン。当時のフォレスターをベースに3列シート化し、エンジンは2リッターNAと2リッターターボを用意。サイズ感はアウトバックに近かった。

 2列目席はベンチシートのみだが、3列目席とともに見た目よりはるかに快適に座れたものだ。走りの質は、もちろんスバルならではの良さがあった。

 このなかで、今でも唯一、通用するミニバンという意味では、やはりエスティマだろう。レッドのボディにルーフを黒く塗り分けた最後期型は、いま見ても、まったく古さなど感じさせない。そのハイブリッドモデル(AC100V/1500Wコンセント付き)なら、この先もしばらくは乗っていられるはずである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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