スーパーカー扱いしてるのは日本だけ! 昭和の少年の心を鷲づかみにしたペッタンコカー「ロータスヨーロッパ」の真実 (2/2ページ)

正体は軽量な車体を活かした超絶ハンドリングマシン

 フレームはエランに続いてバックボーンタイプを採用。後部をY字に開き、中に直列4気筒エンジンやトランスミッションを縦置きした。この部分だけ見ると、たしかに葉巻型と呼ばれた当時のフォーミュラマシンを思わせる。

 しかも車名のとおり、当初はヨーロッパ大陸のみで販売された。クーペボディだけとしたのは、高速長距離移動を念頭に置いたため。綴りも「Europa」と、英語ではなくイタリア語やスペイン語のそれとした。

 ルノー16に積んでいた1.5リッターOHVエンジンを、トランスミッションもろとも供給してもらったのは、現地で整備がしやすいようにという配慮だった。

 ヨーロッパにはS1、S2、ツインカム、スペシャルの4世代がある。ルノーエンジンだったのはS2までで、ツインカムは先にエランに積まれていたフォードブロック+ロータスヘッドの1.6リッターDOHCを搭載。後方視界の不満を解消するために、エンジンフード左右のフィンが削られたことも特徴だ。

 そしてスペシャルでは、当時のJPSカラーのF1のように、細いピンストライプがボディに描かれ、エンジンはエラン・スプリントに続き、圧縮比を高めバルブを大径化した、通称ビックバルブ・ツインカムが積まれた。

 僕はS1を除くすべてのヨーロッパに乗ったことがあるけれど、S2とツインカム以降では印象は大きく異なる。

 S2は加速も音も牧歌的で、まっすぐ走る限りはまるでスポーツカーっぽくないが、コーナーでは激変。軽くて重心の低いボディとエンジン、理想的な前後重量配分、しなやかな足の組み合わせは、マジで底なしだった。それをF1ドライバーのように、路面すれすれの低い場所に座り、上体を大きく傾けた姿勢で味わうのは、まさにフォーミュラフィーリングだった。

 それに比べるとツインカム以降は、加速は力強く、音も気持ちよくなり、サスペンションは固められて、身のこなしはソリッドになった。あらゆる面でスポーツカーっぽくなったけれど、個人的にはS2のほうがインパクトは上だった。

 スーパーカーとは排気量やシリンダー数や最高出力やトップスピードなど、スペックがすごいスポーツカーのことを指すと個人的に思っている。そういう意味では、ヨーロッパはスーパーカーではないけれど、F1パイロット気分にさせる操縦感覚はスーパーと呼んでいいと考えている。


森口将之 MORIGUCHI MASAYUKI

グッドデザイン賞審査委員

愛車
1971シトロエンGS/2002ルノー・アヴァンタイム
趣味
ネコ、モーターサイクル、ブリコラージュ、まちあるき
好きな有名人
ビートたけし

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