【試乗】FRスポーツのBRZをなんと雪道で全開! 「まともに走れるの?」どころか「楽しすぎ」て笑うレベルだった (2/3ページ)

400ccアップの排気量がコントロール性に確実に効く!

 いよいよ自らのペースで思いっきり走らせる。スタートダッシュ力こそ四輪駆動車には敵わないと言えども、二輪駆動のFRながらBRZはそこそこの加速ダッシュを発揮してくれる。

 ひとつには装着されている横浜タイヤの「アイスガードIG70」がいいトラクション性能を発揮していることもあるが、標準装備されるトルセンのLSDデフが駆動輪左右に均等な駆動力をかけ、加速時の重心移動も相まって、しっかりとしたトラクションが確保できているのである。車速が乗ってしまえばそこから先はFRらしく自由自在なハンドリングを楽しめる。

 減速時にあまりハードなブレーキングをするとフロントブレーキを中心にABSが介入してステリングが効かなくなるが、その辺はエンジンブレーキを多用して操舵応答を失わなければ、ノーズは思っている以上にすんなりとインを向くようになる。一旦ノーズがインを向いて車体にヨーモーメントが発生すると、リヤがそれに呼応するようにスライド。そこから先はパワースライドコントロールが可能になる。

 このパワースライド領域においては、2.4リッターとなった新型エンジンの低速トルクが力強く、またスロットルレスポンスに優れ、トルクピックアップが素早く行われることで駆動力コントロールが行いやすい。また、トルセンデフが左右両輪の駆動力を逃すことなくパワーコントロールがダイレクトに行われるので、それも含めてスライドコントロールがしやすくなっているのだ。

 パワースライドを始める少し前にカウンターステアを当て始めるが、そのカウンター量はスライド量に合わせて適切にドライバーがコントロールする。もちろんこうしたドライビング技術を駆使するにはトラクションコントロールを完全にオフにしなければならない。

 BRZの場合「トラック」モードという、ある程度スライドを許容するスポーツモードを装備しているが、雪道ではそれをさらに超える領域でのスライドコントロールが必要になるため、トラクションコントロールを完全にオフにする必要がある。シフトレバーの手前左側にあるトラクションコントロールのスイッチを長押しすると、VSCやトラクションコントロールを完全にオフにすることが可能だ。

 BRZはリヤサスペンションのスタビライザーがボディ直付けとなっていること、そしてフロントのアップライトがアルミニウム合金性となっていることがGR86と異なるところだ。それが雪道の特性にあっているかどうかは、直接比較をしてみないとわからないのだが、少なくともBRZのセッティングは非常に雪道に適しているものといえた。

 轍が深くまた凍結していて路面の硬い部分においては、前輪が轍に取られキックバッグ入力が大きく発生するが、そうした場面においてもステアリングに返ってくる反力は非常に小さく抑えられていて、しかし路面の状態はステアリングの手応えとして把握しやすい。こうした特性がアルミ合金の持っている柔軟さと関連していると考えることもできる。サーキット走行において、ハイグリップタイヤで路面からの反力が大きな場面も試したことがあるが、そうした場面でもBRZのフロントサスペンションはマイルドな手応えとして好印象だった。それがこうした路面変化の激しい雪道においても維持されているのは歓迎できることだ。オンロード・オフロード、両面で優れた特性であることが確認できたわけである。

 リヤスタビライザーの取付点においてもこうした雪道でリヤサスペンションは非常にスムースに動き、その動きのなかにおいても両輪の接地性が高くパワーコントロールがしやすかった。リヤサスペンションはストローク感が感じられ、駆動力コントロールもしやすい。また、路面の凸凹などもうまく吸収してドライバーが大きく身体を揺らされることなく走破していけるのは、ドライブコントロールする上で好ましい特性といえる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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