長年日本のバカ売れジャンルなのにナゼ? 国産ミニバンを海外販売しない理由 (2/2ページ)

海外を視野に入れないことで国内での人気がさらに高まる

 日本でミニバンが普及を開始したのは、ステップワゴンなどの初代モデルが発売された1990年代の中盤だ。今では30年近くが経過するから、ミニバンも国内市場に定着した。ミニバンに親しんだ子供が成長して子育てをする世代になり、自分の親と同じように、ミニバンを購入するケースも増えている。

 ミドルサイズミニバンが海外で売られない理由として、狭い全幅と高い全高による走行安定性の不安も挙げられる。新型のノア&ヴォクシーやステップワゴンは3ナンバー専用車になったが、従来型やセレナは、標準ボディが5ナンバーサイズに収まった。

 その一方で全高は1800mmを超えるから、全幅の数値を上まわる。欧州のように日常的に高速走行の機会が多い地域では、高重心のボディは走行安定性を確保するのが難しいと判断され、ミドルサイズミニバンのようなクルマは敬遠される。

 このほか先に触れたハンドルの位置関係も挙げられる。日本では車両が左側を通行するから、右ハンドルになる。海外には右側通行の地域が多いから、本格的に販売するには、左ハンドル仕様を用意せねばならない。この開発/製造コストが高まることも、ミドルサイズミニバンの海外進出を難しくしている理由だ。

 そうなるとミニバンは海外市場を考慮しないから、軽自動車と同じく100%国内向けに開発される。海外市場を横目で見ながら開発されたクルマとは、日本のユーザーに向けた心意気が違うため、ミニバンはますます人気を高めるわけだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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