「エンジンの存続」は命にかかわる重要事項! トヨタが水素エンジン車に力を入れるにはワケがあった (2/2ページ)

トヨタのEV戦略は「2030年までに年間350万台」

 水素エンジンも、そこに位置付けられる。圧縮して燃焼させる内燃機関だが、水素は基本的に二酸化炭素を排出しない。従ってエンジンなのに、地球温暖化対策になり得る。「内燃機関はダメ」という考え方が技術の多様性に欠けており、可能性を狭めることを明確に示すのが水素エンジンだ。トヨタでは水素エンジンの市販化に向けた研究開発を開始したが、「二酸化炭素を排出しない内燃機関」という存在自体にも価値がある。

 とくにトヨタの場合は、約170の国や地域でクルマを販売している。アフリカなどは充電環境も未整備で、電気自動車の普及には時間を要する。クルマが故障すれば生命まで危うくなるような、切実な状況下でも使われるのがトヨタ車だ。

 そうなると「すべての新車を電気自動車と燃料電池車にする」とか「内燃機関は廃止する」とはいえない。それをいえば、見捨てられる市場が出てくるからだ。そこで電気自動車の戦略も「2030年までに年間350万台」とした。台数の目標を掲げるに留めている。

 なお水素エンジン搭載車が普及するには時間を要する。燃料電池車を含めて、保有台数が圧倒的に少ないからだ。給油所(ガソリンスタンド)の数は、ピークだった1994年に比べると半分以下に減ったが、それでも約2万9000箇所が営業している。これに比べると水素ステーションは、約160箇所と大幅に少ない。

 今後は主に燃料電池車の普及に伴い、水素ステーションも徐々に整備されていく。この度合いに応じて、水素エンジン車もニーズに応じて市販される。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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