フェラーリを名乗らない伝説のフェラーリ! 最初はエンジンの名称だった「ディーノ」とは (2/2ページ)

現代に続く世にも美しきスモールフェラーリの始祖

 もっとも初期型のディーノGT、すなわちディーノ206GTは、1967年のトリノショーで発表された。

 それまでのプロトタイプと大きく異なっていたのは、そのパワートレインのレイアウトで、エンジンは縦置きから横置きに搭載方向が変更され、2リッターの排気量から公称値で185馬力の最高出力を発揮した。ホイールベースが2880mmと、より高い回頭性を実現する数値にまで短縮することができたのも、このV6エンジンを始めとするパワートレイン配置の恩恵だ。

 ボディにアルミニウムを用い、900kgと軽量な206GTは、しかしながらその生産工程にコストがかかりすぎる等々の問題から、2年間に生産された台数はわずかに152台とされている。

 この206GTの後継車として1969年のジュネーブショーで発表されたのが、246GTだ。シャシーは新型となり、ホイールベースも60mmが延長されている。

 それはおもにキャビンの居住性向上のために使用されているといった印象だ。アウターパネルの素材も、より効率的に大量生産が可能なスチール製に変わった。公称値ではアルミ製の206GTに対して180kgの増加という結果になっている。

 搭載されるV6エンジンのブロックもアルミニウムから鋳鉄となり、それによって排気量を2.4リッターへとさらに拡大することが可能になった。最高出力は195馬力、最高速は235km/hと発表されたが、実際にはこの数字にかなり近い領域にまで加速が可能だったという。

 ディーノ246GTには、生産時期によって3タイプの仕様がある。1969年から1970年まで生産されたティーポL、1971年のみ生産されたティーポM、そして1971年から生産が終了する1974年まで作られたティーポEの3タイプがそれだ。ちなみにアメリカ市場を中心に人気のタルガトップを持つオープン仕様の246GTSは、基本的にはティーポEがベースとなる。

 246GT/GTSの生産が1974年に中止されて以降、長年フェラーリのラインアップに復活を遂げることはなかったV6モデル。だがようやく、ディーノの名は与えられなかったものの、新たに296GTB/GTSとして、今度は120度のバンク角を設定したV型6気筒ターボにハイブリッドシステムを組み合わせた、最新世代のV6モデルが現代に復活することになった。

 その圧倒的なパフォーマンスと美しさに裏づけされた人気は、フェラーリの予想したとおり上々の様子だ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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