ちょっと商品力が……と思ったらまさかの大ヒット! 実力以上に売れまくった国産車6選 (2/2ページ)

使い勝手抜きで見た目のインパクトでヒットを飛ばしたモデルも

 販売台数が実力以上に伸びるふたつ目の理由は、そのカテゴリーがブームになって注目された場合だ。古くは日産セフィーロワゴンが挙げられる。初代スバルレガシィが1989年に発売され、ステーションワゴンがブームになり、1997年に発売されたセフィーロワゴンも堅調に売られた。

 セフィーロワゴンは、ワゴンブームに乗り遅れないように短期間で開発され、カーブを曲がる時には後輪の接地性が削がれやすかったが、日産ステージアよりも広い荷室で人気を得た。1995年には、登場して3年を経過した初代トヨタ・カルディナが前年の1.6倍も登録されるなど、短期間ではあったがステーションワゴンが絶好調に売られた時期だった。

 トヨタC-HRも、2016年12月に発売され、2017年には1カ月平均で約1万台が登録された。同年の小型/普通車販売ランキングは、プリウス、ノート、アクアに続いて4位に入った。SUVが急速に人気を高めた時期で、C-HRは外観もカッコ良く、トヨタ車でもあったから絶好調に売られた。

 しかし、2年後の2019年には、コロナ禍の前ながら、1カ月平均の登録台数は4640台で半数以下に落ち込んだ。C-HRは、SUVなのに後席と荷室が狭く、後方視界も悪い。開発者が「C-HRは視界に関するトヨタの社内基準をギリギリでクリアした」と語ったほどだ。つまり2017年の約1万台に達する登録台数は、実力以上だった。

 このほか、2022年上半期(1〜6月)の小型/普通車販売ランキングで1位になったルーミーも、実力以上の売れ行きだ。ルーミーは軽自動車の好調な売れ行きにストップを掛けるべく短期間で開発され、エンジンやプラットフォームはパッソと同じだから、動力性能、ノイズ、走行安定性、乗り心地に不満がある。後席は床と座面の間隔が不足して、足を前方へ投げ出す座り方になり、座り心地の柔軟性も乏しい。走りに問題を抱えるが、積載性や収納設備の使い勝手が優れ、「N-BOXやタントのようなコンパクトカーが欲しい」と考えるユーザーから高い支持を得た。2020年にはトヨタの全店が全車を販売する体制に変わり、姉妹車のタンクを廃止して、需要がルーミーに集中したことも高人気の理由だ。

 以上のように、実力以上に好調に販売される車種には、トヨタ車が目立つ。トヨタ車は長年にわたり大量に売られてきたから、トヨタの新車に乗り替えたいユーザーも多い。販売店舗数も4600箇所だから、日産やホンダの2倍以上で、スバルと比べれば10倍だ。そのためにトヨタ車では、販売力で売れ行きを保つこともある。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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