アイコンの「ヘッドライト」がなくても「911」の血統! ポルシェが生んだ怪物マシン「935」とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

ポルシェ911ターボをベースにグループ5車両として製作されたレーシングカーが935だ

■随時改良が行われたポルシェ935にはさまざまな仕様が存在する

■1978年にロングノーズ&ロングテールの935/78が誕生、モビー・ディックと呼ばれた

911ターボからグループ4の「934」とグループ5の「935」を開発

 ポルシェ911をベースとしたレーシングカーのなかで、もっとも記憶に残るモデルといえば、やはり1976年にスタートしたグループ4、そしてグループ5によるツーリングカーだろうか。

 グループ4車両として開発された「934」は、1973年に登場した911(930)ターボをベースに、さらに大型のツインターボや水冷式インタークーラーの採用。エンジン内部でも専用のカムシャフトや吸排気ポートの拡大といったチューニングを施し、911ターボの260馬力から、最高出力を485馬力にまで引き上げたモンスターマシン。それはワークスのみならず、クレーマーなどのプライベーターにも数多くの勝利を導くことになる。

 この量産グランドツーリングカーたるグループ4車両は、連続する12カ月間に最低400台の生産が義務付けられ、改造の範囲も狭いものだったが、一方で改造量販ツーリングカーと呼ばれたグループ5車両の「935」も、同様に市販型の911ターボをベースに生まれたモデルだった。

 その姿を見て誰もが最初に感じるのは、グループ4の924とは異なり、エアロダイナミクスを追求するためにモディファイされたボディデザイン。とりわけワイドに張り出したリヤフェンダーやフラットノーズのスタイルは、いかにも935が持つパフォーマンスを象徴するかのような刺激的なものだった。

 だが、ポルシェにとっては、この935も実際に市販される911ターボも、あくまでも同系列のモデルであるという哲学が貫かれていた。ここで理想を描くのならば、レースに参加するために935でサーキットを訪れ、終了後にはその935で再び家へと帰るというスタイルこそが、ポルシェの考える美学にほかならなかったのだ。

 それは実際に935のメカニズムを検証してみても、ターボエンジンやクラッチの耐久性はもちろんのこと、ギヤボックスの容量など、オンロード走行をも十分にこなすことのできるマシンに仕上げられていた。フロント、サイド、リヤのウインドウやフロアも、ベースの911ターボと変わらない。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

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