どこが便利でどこが不便? 「EV乗り」がホントのところを語る! (2/2ページ)

充電速度が遅く寒冷地では電費が極端に落ちる問題はまだ未解決

 電気は気難しい性質を持っている。バッテリーEVによっては急速充電器を選ぶ。相性が悪いと、充電エラーが出て充電できない。電欠ギリギリで充電できないと立ち往生してしまう。筆者も電欠寸前に追い込まれたことが何度もある。また、バッテリー残量や気温などによっても入っていく電気量が異なることも、内燃機関にはない弱点と言えるだろう。

 急速充電は充電時間を短縮できる。だが、高電圧の電流を使って充電するからリチウムイオンバッテリーに負荷がかかる。頻繁にフル充電しているとバッテリーの劣化が心配だ。だから急速充電器は30分で止まるように設定し、基本的には80%充電を上限としているのである。100%充電したい人や、劣化を最小に抑えたいと言う人は、家庭用の200V、3kW(または6kW)の3口コンセントで普通充電するのがいい。これなら自宅のガレージに安価で設置することができる。

 だが、難点は充電時間が長いことだ。35.5kWのバッテリーを積むホンダeは、フル充電まで一晩(約11時間)かかる。アリアやbZ4Xのようにバッテリーを多く積んでいるクルマだと、満充電になるまで丸一日(24時間)程度かかってしまうのだ。だから多くのユーザーは、普段は普通充電だが、急ぐときや長距離ドライブするときは急速充電をしている。

 バッテリーEVの多くは、航続距離を伸ばすために重いバッテリーをたくさんフロア下に敷き詰めるようになった。だから背が高く、フロアが高くても違和感を抱かないクロスオーバーSUV的なルックスのバッテリーEVが多いのである。バッテリー容量を割り切ったホンダeは2BOXスタイルを採用し、「街乗りベスト」と割り切った。マツダのMX-30も立体駐車場を使える全高に抑えている。が、こういったバッテリーEVは少ない。多くは大柄で車重も2トン前後だから、使える立体駐車場は限定されてしまうのだ。

 内燃機関もそうだが、バッテリーEVは運転の仕方や走るルートによって電費に大きな差が出てくる。エネルギー回生を使えるバッテリーEVは、アクセルペダルの操作だけでスピードを自在にコントロールし、電気を溜めることが可能だ。だが、登り坂は苦手だし、気持ちいい加速を楽しんでいると電気をたくさん吐き出し、電費は一気に落ち込む。また、多くの回生量を期待できない高速走行も苦手なステージだ。瞬発力の鋭いバッテリーEVは、運転の仕方も変える必要がある。

 バッテリーの弱点のひとつは、温度変化に対する適応性に難があることだ。なかでも苦手なのが低温で、氷点下の寒冷地だと消耗が激しい。EVは寒い時に電気式ヒーターで車内の温度を高めようとするから電費は大きく落ち込み、航続距離はぐっと短くなる。これも内燃機関に乗り慣れている人にとっては信じられないことだ。寒いと平坦路でも電気の効率は落ちる。電費を悪化させないためにはエアコンを切り、シートヒーターやステアリングヒーターを使うというテクニックが必要だ。

 内燃機関とバッテリーEV、どちらも長所と短所がある。が、100年にわたって進化を続けてきた内燃機関と同じように、遠からずバッテリーEVも格段の進化を遂げ、不安を払拭してくれるはずだ。これから先10年で、自動車の世界は大きく変わるだろう。


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