「ハイブリッド車かEVか」の議論はナンセンス! 大きな視点でみればどちらもCO2排出量削減に貢献するエコカーだ (2/2ページ)

カーボンニュートラルを語るならマクロ的視点が必要

 要するに、1台のEVをフル充電(フル充電による走行可能時間、走行可能距離と置き換えてもよい)にする電力の発電に要した火力発電所の二酸化炭素排出量と、1台のHVがガソリンを燃焼して排出する二酸化炭素量のいずれが多いか、という比較論である。

 この問題は、正直に言えば比較困難で、1台のEVの充電に要した発電電力でどれだけの二酸化炭素を排出したかという実態がつかみきれないのである。というのは、まず発電電力の「内訳」に留意しなければならない。現状、日本の全発電電力の発電方式を区分すると、太陽光や風力、地熱といったいわゆる「新エネルギー」による発電、石油を燃料とする発電、LNG(液化天然ガス)による発電、水力発電、そして石炭を燃料とする火力発電、原子力による発電と大まかに分けて6方式に区分される。

 このうち二酸化炭素を排出する発電方式は、燃料に炭素成分が含まれる石油、LNG、石炭による火力発電で、日本の総発電量(2019年データ)の約4分の3に相当している。また、燃料の燃焼による二酸化炭素の排出量は石炭発電がもっとも多く、石油、LNGの順で少なくなっている。

 ところで、EVとHVの二酸化炭素排出量比較の問題だが、この両者を比較するなら、その前に自動車全体としての二酸化炭素排出量に着目すべきだろう。日本における二酸化炭素排出総量は、2013年をピークにその後は減少傾向をたどっているが、このうちもっとも排出量の多い項目がエネルギー産業(発電等)で全体の40%強、次が製造業&建設業で約23.5%、3番目が自動車を中心とする運輸関連で約10.6%となっている。

 こう見てみると、石炭、石油、LNGによる発電による二酸化炭素の排出量が、二酸化炭素全排出量のうち相当な割合を占めていることがわかる。その電力を利用して走行用バッテリーを充電するEVが、二酸化炭素排出削減に貢献するという言い方に、抵抗を覚えるのも仕方のないことである。

 一方、かつてのガソリンエンジン搭載車より、1台当たりの二酸化炭素排出量が2分の1から3分の1へと激減しているHV車の進化を踏まえると、ひょっとしたらEVより二酸化炭素の排出量が少ないかもしれない、と考えるのも無理からぬ話である。

 かつては80%近く、現在も67〜68%近くの電力を原子力発電に依存し、将来的には自然エネルギーとの並立をビジョンとして描き出しているフランスのような場合には、EVによる二酸化炭素排出を限りなくゼロに近付けることもできるが、現状、EVとHVの実用性も含めた視点で二酸化炭素の排出量削減を考えれば、EVとHVの比較ではなく、二酸化炭素の削減を目指したEV&HVのローエミッション世代対在来のガソリン/ディーゼルという内燃機関の比較が正当な判断基準ではないかだろうか。

 ミクロ的に見た二酸化炭素排出量の差は、当然ながらHVとEVで違いはあるが、マクロ的に見た二酸化炭素排出量の差は、HV&EV対在来機関という捉え方となり、この両者の違いのほうがはるかに大きく、重要な案件であることは間違いない。


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