韓国ヒョンデと中国BYDのEVの完成度がヤバい! トヨタですらうかうかしてられないEV市場戦国時代 (2/2ページ)

商品の作り込みにはこれまでのクルマとは異なる考え方が必要

 ある意味で、EV走行は回生を前提とした回転力が、タイヤ・ホイール・ハブ(車軸)・サスペンションに頻繁に掛るのである。その点において、回生を利用するといっても、HVの頻度とは異なる。ことに、シリーズ・パラレル式ハイブリッドシステムを使うトヨタの場合、エンジンとモーターによる総合効率を追求する方式のため、回生は必ずしも強くかかるわけではない。

 それに比べ、日産からシリーズ式ハイブリッドのe-Powerが発売されたことにより、日産はEV同様のワンペダルによる回生の利用を積極的にHVでも活用した。トヨタも、バイポーラ型ニッケル水素バッテリー車載のアクアから、シリーズ式の特徴を活かす走行特性としたが、まだEVやe-Powerほど強い回生を頻繁に利用するまでに至っていない。

 つまり、トヨタやSUBARUは、トヨタのハイブリッドシステムを前提とした回生の効果とその負荷しか考慮できないままbZ4Xとソルテラを市場導入したのではないかと推測される。それが、ひとつの可能性としてリコールにつながったのではないか。

 BYDのATTO3(アットスリー)は、日本仕様を年明け1月まで待たなければならないが、すでに同じ右ハンドルのオーストラリア仕様を使い、神奈川県横浜の赤レンガ倉庫で消費者向け試乗会を催している。試乗してみると、完成度の高いEVであることが実感できた。

 仕上がりでは、ヒョンデのIONIQ 5も高い水準にある。この両車は、クルマとしての総合的な完成度も高い。対するbZ4Xとソルテラは、後席の乗り心地や騒音対策などで改良の余地を残す。つまり、現時点ですでに中国や韓国のEVは、トヨタやSUBARUを超えているのである。

 これに、人気の高まる米国テスラを加えると、新興勢力とみられている自動車メーカーのEVが、世界一の自動車メーカーであるトヨタを上まわることが起きている。もちろん、トヨタの財力と技術力をもってすればたちまち挽回してくるのだろう。だが、一度失った市場や信頼は、一朝一夕には回復しきれないかもしれない。

 EVは、これまでのエンジン車やHVとは違った特性や商品性を持つものであり、クルマといっても別の視点や価値観が不可欠だ。そこを見落とすと、市場勢力の転換が起こる可能性がある。

 今年3月には、ホンダとSONYが新会社を設立し、EV開発に共同で取り組むと発表した。日本勢のなかにも、EVに向けた新たな挑戦をはじめるメーカーがある。

 EVは、単にモーターとバッテリーを組み合わせた金太郎飴のような商品ではなく、技術開発を含め商品性の作り込みに別の発想が欠かせない。そこを見落とすとしくじる。これまでにない創造と革新的面白さを備えたクルマなのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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