失速したクラウンを復活させる壮大な計画! 4車種投入と登場順序に隠れた巧妙な狙いとは (2/2ページ)

それでもトヨタはクラウンを残したかった

 それなのにクラウンは、1955年に初代モデルを投入したトヨタの基幹車種だから、今後も残したいと判断された。全店が全車を扱う販売体制に移行しながら、クラウンには情けを抱き、大きな矛盾を生み出した。

 その結果、トヨタが支払った代償も大きく、クラウンに4種類のボディを用意した。かつてマークXは、ミニバンの人気が高かった時代にマークXジオという3列シート車を加えて登録台数の上乗せを図ったが、失敗してマークX自体が消滅した。1〜2車種では、クラウンが販売不振から抜け出せない心配もあり、4車種が必要だった。

 そこでクラウンを海外でも販売できる売れ筋カテゴリーのSUVに発展させ、なおかつ4車種を用意してシリーズ化したわけだ。4車種を合計してクラウンの生産/登録台数を算出すれば、相当な台数になる。クラウンを絶対に廃止させない万全の体制を敷いた。

 そして2022年7月に発表された第1弾がクラウンクロスオーバーだ。外観はSUV風だが、ボディの形状は、後部に独立したトランクスペースを備えたセダンになる。

 今後はボディの短いSUVのクラウンスポーツ、車内が広く3列シート仕様も用意するクラウンエステート、ほかのクラウンシリーズとは異なり、従来と同じ後輪駆動のプラットフォームを備えるクラウンセダンも発売する。クラウンセダンは、従来型で豊富だった法人需要を受け継ぐことが主な目的だ。

 この4車のなかでもっとも多く売られるのはエステートだが、これを最初に発売すると、セダンだった従来型との格差が大きすぎる。だからといってセダンが最初では、クラウンの変化を表現できない。そこで新旧クラウンの橋渡しをするために、セダンボディのSUVというクラウンクロスオーバーを最初に投入した。クラウンを廃止せずに今後も存続させるため、壮大なプロジェクトがスタートした。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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