新型日産セレナの室内を徹底調査! 「イイとこ」「もう一歩なところ」を本音で解説 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■モデルチェンジした新型日産セレナのパッケージングとユーティリティを検証

■パッケージングの基本は先代を継承しつつ細かな改善により使い勝手と快適性が向上

■シートアレンジが絶品でフルフラットにしての車中泊にももってこいの1台となっている

生まれ変わった新型セレナのユーティリティをチェック

 6代目となるセレナは商品コンセプトやプラットフォームなどを先代から継承。ファミリー層に絶大なる人気を持つセレナらしさを維持しつつ、新世代のMクラスボックス型ミニバンとして大きく進化した新型だ。前回の商品概要に続き、今回はパッケージング、ユーティリティなどについて解説したい。

 パッケージングの進化は? ……とまず説明したいところだが、じつは、室内空間の基本は変わっていない。1-2、2-3列目席の配置、1-3列目席のエレベーション(フロアの後ろ上がりの角度)など、基本的に先代のままとなる。言い方を変えれば、先代でMクラスボックス型ミニバンとして変えようもない完成度を持っていた、ということにもなる。が、シート背後の削りもあって、1-3列目席間距離は、クラストップレベルだという。また、3列目席が全グレードでスライドするのも、クラス唯一。

 注目点は、セレナ独自のマルチセンターシートだ。マルチセンターシートは1-2列目席間をスライドできる、1列目席ではコンソールに、2列目席では左右席の間に置くことで、幅の広い2列目セミベンチシート化に貢献するアイテム。

 それ自体は先代にもあったのだが、先代の途中で加わったe-POWERモデルに関しては、1列目席の中央に、e-POWERバッテリーを収めるためのコンソールが最初からあるため(非e-POWER車は空間になっている)、1列目席のほうにスライドすることができず、e-POWER車では不採用だったのである。よって、先代e-POWER車の2列目席はキャプテンシート状態のみで、マルチセンターシート付車の8人乗りが実現できず、最大7人乗り(2-2-3人)だったのである。

 それを、新型ではマルチセンターシートをオーバーハング構造とし、1列目席中央のe-POWER用バッテリー部分にかぶさるようにデザインしたため、マルチセンターシートの採用が可能になり、e-POWERモデルでも8人乗りが実現したというわけだ(実際に常時、8人乗りことはないだろうが……)。

 そうそう、グラディングパネルを廃して、すっきりシームレスな印象となったサイドビューだが、サイドシル部分に注目すると、フロントドア下がプレイラインとともに少しえぐれていることがわかる。じつはそれ、前席の乗降性を高めるえぐりなのである。新型セレナの下半身のカッコ良さは、ただのデザインではないのである。

 さて、ミニバンと言えば、スライドドアからの乗降性が売りだが、開口部の寸法、そして地上390mmのステップ地上高、そこから約90mm高いフロア高は、プラットフォームをキャリーオーバーしていることから、先代と変わらず。個人的にはステップワゴン的なワンステップフロアを期待していたのだが……。

 クラストップレベルの後席室内空間、各席のニースペースもまた不変。具体的には、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、その背後の2列目席に座ると、頭上に240~280mm、膝まわりに標準スライドで410mmものスペースが確保されている。エルグランドが同430mmだから、Lクラスミニバンに匹敵するゆとりがある2列目席と言っていい。

 2列目席1座のシートサイズは、シートクッション長では先代よりやや短めだが(500→480mm)、シート幅はわずかにワイドになり(505→525mm)、フロアからシートクッションまでの高さ=ヒール段差が350mmとたっぷりあるため、かけ心地はシートクッションの良さと合わせ、快適そのものだ。

 ちなみに2列目席を中寄スライドさせ(マルチセンターシートは前方にセット)、最後端位置までスライドさせると、膝まわり空間は500mm以上になり、まさに広すぎると感じるほどの足元のゆとりが出現する。4名乗車で移動するときにはコレである。

 ただし、フラットフロアながら、フロアにはマルチセンターシート付で6本ものレールが縦に走り、フロアマットを敷けないのが、レールのうるささとともに、先代同様の気になる点かも知れない。

 3列目席と言えば、乗降のためのウォークイン幅は先代同様の最大330mmで、身長172cm、体重65kgの筆者であれば、まったく無理なく乗降できることを確認。フラットフロアに置かれた最大3人掛けのシートのサイズもまた先代同等だが、ヒール段差が20mmほど高まった印象で、より体育座り的にならないかけ心地となっていた。

 スペースとしては、頭上方向に先代を上まわる150mm、膝まわりに最小(2列目席標準スライド後端)120mm、膝まわりに最大410mmもある2列目席の膝まわりスペースを、足が組める200mmちょっとにすれば、なんと3列目席膝まわり空間に220mmものスペースが確保され、2/3列目席ともに足もとの狭さとは無縁で乗車することができるのが、新型セレナである。

 一方、2/3列目席からの視界は良好だ。新型セレナでは、疲れにくさと車酔いのしにくさにもこだわりがあり、車内の静かさによる会話のしやすさ、そして運転操作の筋負担、急な頭の動きの低減のほか、視界の広さが挙げられている。

 そこで注目したいのが、ウインドウ面積による視界の広さ。自身はクルマ酔いしないので、確かめようもないが、疲れ、酔いへの影響因子を徹底的に抑え込むことで、ロングドライブでの快適性に効果が出てきそうである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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