街乗りなら要らないテク! MT乗りの憧れ「ヒール&トゥ」ってそもそも何のために必要なの? (1/2ページ)

この記事をまとめると

■ヒール&トゥはドライビングテクニックのひとつ

■やり方や意味について詳しく解説

■現在はシフトダウン補助システムが実用化されている

シフトダウン時のクラッチミートをスムースに行うテクニック

 マニュアルトランスミッションしかなかった時代のレーシングカーを操る上で、必要不可欠なドライビングテクニックがヒール&トゥだった。文字どおり、かかととつま先を使ってアクセルペダルとブレーキペダルを操作する、減速(ブレーキング)しながら同時にシフトダウンするテクニックである。この操作ができないと、確実に減速時間(距離)にロスが生じ、ライバルに遅れをとってしまうことになる。

 さて、今さらおさらいになるが、このヒール&トゥのテクニックについて振り返ってみよう。わかりやすい例として、サーキット走行のこんな場面を思い浮かべて欲しい。最上位のギヤ(たとえば6速)を使いアクセル全開でストレートを走行。しかし、その後に続く第1コーナーは、当然ながら減速しなければ回れない。この時、ドライバーはどんな操作をするだろうか、ということである。

 仮に、1コーナーが3速(の速度域)でしか回れない曲率だったとしよう。サーキット走行だから、1コーナーの減速に際してアクセルをオフによるエンジンブレーキだけの減速操作はあり得ない(これでは圧倒的に遅くなる)。フルアクセルの状態から瞬時にブレーキペダルに踏み替え、最大制動力で1コーナーの進入に適した速度にまで減速する。

 問題はここからで、右足をアクセルペダルからブレーキペダルに踏み替え、ブレーキだけによる減速操作より、エンジンブレーキを併用したほうが、さらに減速効果は大きくなる。ただし、最大の制動性能を得るためには、右足はブレーキペタルを踏んだままにしておかなければならない。この状態で、エンジンブレーキを併用する方法はふたつしかない。

 ひとつは、6速に固定したままブレーキングする方法だ。この方法で1コーナーの旋回速度に対して適正な速度にまで減速した後、3速にシフトダウンして1コーナーを回っていく走法だ。もうひとつは、ブレーキング中にシフトダウンする方法で、右足でブレーキペダルを踏みながら、その間の減速幅に応じて5速、4速、3速とシフトダウンしていく方法である。しかし、実際にやってみればわかるが、クラッチペタルを踏み、シフトレバーを操作してギヤを変更し、クラッチペダルを戻す、というこの操作は、クラッチミート時に選択したギヤとエンジン回転が合わず、クラッチペダルを戻した瞬間に「ドン」という接続ショックが発生し、スムースなシフトダウンが行えない。

 言い換えれば、エンジン回転数と駆動輪の回転数が合わず、瞬間的に駆動輪をロックさせていることになるのだが、これではエンジンブレーキ併用して制動距離を短くすることはおろか、場合によっては駆動系やエンジンを傷めたり、駆動輪がロックすることで車両挙動を不安定にする弊害が生じてしまう。

 こうした問題を解決する方法として考え出されたテクニックがヒール&トゥである。ヒール&トゥは、つま先でブレーキペダルを踏みながら、かかとでアクセルペダルを踏むことでエンジン回転数を調整。シフトダウン時のクラッチミートをスムースに行うレーシングテクニックである。


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