たった6台の超激レアなフェラーリ! F40にソックリな「288GTOエボルチオーネ」の正体とは (2/2ページ)

F40を生み出すためにはなくてはならない重要モデル

 288GTOエボルチオーネは、トータルで6台が存在しているが、このうち1台は288GTOをドナーとして用いたもの。最初からエボルチオーネとして製作されたのは残りの5台のみである。

 そのスタイルは288GTOのそれよりもさらにエアロダイナミクスを意識したものとなり、ボディパネルにはカーボンやケブラーといった軽量素材が惜しみなく用いられている。参考までにこのボディのCd値は0.29。

 288GTOで採用されていたトンネルバックのリヤウインドウスタイルを廃止し、エンジンルームを放熱用のスリットが刻まれるプレキシグラスでカバーするデザインなどは、後のF40にも影響を与えたテクニックだ。

 ボディのフロントセクションは288GTOより丸みを帯び、一方リヤセクションには多数のスリットが設けられた。これらはいずれもF40には受け継がれなかったが、288GTOエボルチオーネに独自のディテールとしてファンの目には魅力的に映るフィニッシュである。

 ボディの製作やシャシーのセッティングは、フェラーリのセミワークス的存在ともいえるミケロットがこれを担当したが、エンジンはマテラッツィ氏を中心とするチームがその開発に積極的に取り組んでいる。ちなみにこのチームが288GTOエボルチオーネのために試作したエンジンは2タイプ、F114CK型とF114CR型である。

 これらはいずれも288GTOのF114B型をベースとするもので、圧縮比の向上やターボチャージャーの大型化、カムシャフトや吸排気システムのデザインを見直すことなどで、前者では530馬力、後者では630馬力の最高出力を得ることに成功した。一方乾燥重量はわずかに940kgに抑えられたというから、それがF40の開発にいかに大きな役割を果たしたのかは想像に難くない。

 288GTOエボルチオーネ、それはあのF40を生み出すための、なにより重要なテストベッドだったのである。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
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