最新技術で蘇ったハチロクは旧車乗りの救世主か!? 旧車のEV&水素エンジン化は簡単な道のりではなかった (2/2ページ)

いくら最新技術を投入しても旧車という枠から抜け出せない箇所も

 具体的には、制動力の確保にはブレーキ容量を増やすことが必要となるだろう。一方、衝突安全性については対応することは難しい。このあたりはコンバージョンに関わらず、旧車のリスクとして認知しておきたい部分だ。

 重量増という意味では、水素エンジンはEVコンバージョンに比べれば気にしなくて済むかもしれないが、圧縮水素を収める水素タンクは高価であり、安全のためには事故時にも保護されるように積む必要がある。その意味では、公道を走らせるときの衝突安全性に関するハードルは高いといえる。

 水素エンジンではパワー不足も課題だ。当たり前の話だが、ガソリンは炭化水素であり、炭素を含んでいるぶん、純水素より熱量が大きい。当然ながら同じようなエンジン構成であれば水素燃料にコンバージョンした段階でガソリン仕様と同等のパワーを出すことは難しくなる。

 さらにいえば、旧車の安全装備は貧弱だ。それはAEB(衝突被害軽減ブレーキ)がついていないというレベルではない。SRSエアバッグがないのはもちろん、ABSさえも備わっていないのが旧車の世界では当たり前だ。

 このように、現在の基準で安全性能に劣ったクルマに乗っていて、他人を巻き込むような事故を起こしたとき、自己責任で乗っていたという話では収まらない可能性は意識しておくべきだろう。

 旧車をゼロエミッション仕様にコンバージョンしたからといって、最新の環境対応車と同じような性能、使い勝手になるわけではない。EV化や水素エンジンへ改良して、旧車を残すことがナンセンスとはいえないが、万々歳な解決策というわけでもなさそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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