高速域でモーターが単なるお荷物に! 燃費無視では本末転倒! 一見成立しているハイブリッドスポーツの問題点をレーシングドライバーが指摘 (2/2ページ)

モーターアシストの限界をいかに高め効率化を図れるかが課題

 しかし、一般道ではそれほど強力な減速Gを伴わない。そこで乗用車的にはバッテリーを搭載し、電気エネルギーに変換することで現在あるようなHVシステムが一般的になったといえる。

 バッテリー蓄電による電気的HVシステムを搭載するスポーツカーとしてはホンダNSXがある。前輪アクスルに左右個別の電動モーターを配置し、減速時は回生し、加速時はパワーアシストする仕組みだ。加速時には4WDとなることで高い駆動力を発揮することができるのだが、問題は前輪モーターがアシストできるのは時速180km以下という速度制限があったことだ。

 4WDの安定感で時速180kmまで安心して加速させながら、それを超えた瞬間にトリッキーな後輪2輪駆動になってしまうのは、サーキット走行では大きな問題になる。加えて時速180km以上ではHVシステムがただのお荷物になってしまうわけで、これでは完全とはいえない。電動モーターの高回転化、あるいはリダクションギアを介してV-MAX(最高速度)領域まで4WDとして制御する必要がある。

 だからといってバッテリー容量をBEV並みに大型化しては重量が増し運動性能も低下してしまう。バッテリー電力を消費したら内燃機関で発電しながら前輪モーターを駆動する必要に迫られ、そうするとエンジンパワーが制限されてしまう。

 クラウン・クロスオーバーはトヨタ独自のe-Fourシステムで、理想的なパワーマネージメントを完成させているが、走りに特化する分、燃費的にはHVのメリットが活かせなくなってしまってもいる。

 レーシングマシンレベルで見れば、WEC(世界耐久選手権)を走るLMH(ル・マン・ハイパーカー)クラスのマシンやF1、スーパーフォーミュラなども電動化を図って高いパフォーマンスを成立している。

 近くメルセデスAMGはF1マシンのパワートレインを搭載するスーパーカー「AMG ONE」を完成させ、デリバリーを開始するといわれている。

 スーパーカー、スポーツカーの電動化は、今後さらに高い技術力とともに進化して登場してくると思われるのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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