【試乗】さすが「GR」のチューニング! アクアGRスポーツとヤリスクロスGRスポーツの意のまま感が最高だった (2/2ページ)

少ない姿勢変化でワンランク上の車格感のヤリスクロスGRスポーツ

 次にヤリスクロスGRスポーツに試乗する。コンパクトSUVとして大ヒットモデルとなったヤリスクロスの走りをスポーティに振ったのは極めて興味深い。

 試乗に供されたのはFFのHV仕様で、ガソリンエンジン車にもGRスポーツは設定されている。外観の意匠変更はフロントバンパーのラジエターグリルまわりとリヤバンパー下部のデザインとディフューザー形状の変更程度だが、それでもGRスポーツの醸し出すスポーティな雰囲気を感じ取れる。

 室内も仕上げもドアトリムオーナメントやスウェード表皮のシートなど、ブラック仕上げでスポーティ。Gグレードがベースのインパネも丸形メーターがスポーティに見える。

 走り始めると、高応答を謳うパワートレイン制御がアクセル操作によるトルクピックアップやエンジン音とのサウンド一致を実現して意のままに走れるパワートレインとして完成度を高めたドライバビリティとなっていた。そして、強化された動力性能を受け止めるボディとサスペンションチューニングのマッチングが素晴らしい。

 ボディはフロアトンネルの前後2箇所をブレースで強化し、また車体最後部にもロアバックブレースを設定して捻り剛性を大幅に高めているのだ。

 サスペンションはフロントストラット形式で、コイルスプリングを6%強化。ロアアームのNo.1、2ブッシュを全密度化。さらに、ロアアームのアップライト取り付け位置に補強パッチを追加して強化し、コンプライアンス変化を徹底的に抑制している。

 また、駆動ドライブシャフトを中実化して強化し、大トルクを余裕でタイヤに伝えている。そのタイヤはヤリスクロスとして初めてファルケンブランドを採用。FK510SUVは18インチで7.5Jのワイドホイールを装着しているが、じつは専用開発したのではなくリプレイスで、市販されているタイヤそのものだったという。

 リヤサスペンションはトーションビーム式で、やはり溝付きワッシャボルトを片側6本の計12本使用。サスペンション各部の締結剛性を高めているのだ。

 こうしたサスペンションチューニングの効果は走らせるとすぐに感じ取ることができる。滑らかな乾燥舗装路では直進安定性が高く、また操舵初期応答が優れているものの後輪の接地感が高く保たれ安定性が高い。HV車にはバネ上制振制御によりピッチングを抑制していて、姿勢変化が少なく車格が上がったような印象を受ける。

 アクセル、ステアリング、ブレーキの連携が優れていて、ドライバーの操作に高応答することで、SUVでありながら「意のまま」の走りが得られるのは魅力的だった。

 個人的にはSUVなら4WDを推すが、機会があれば(来冬?)雪道走行なども試してみたいと思っている。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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