ガチのカーボンブレーキはじつは市販車向きじゃない! 航空機やF1で使われるブレーキシステムは何がスゴイのか? (2/2ページ)

ブレーキ系が発熱した状態でないと性能を発揮できない

 しかし、カーボンブレーキには大きなウイークポイントがあった。温度依存性が高いことである。ブレーキ系が発熱した状態でないと利かないのだ。逆の言い方すれば、冷えた状態では効かないということで、たとえば車重1トンの自動車が100km/hからフルブレーキングした程度では、十分な発熱が得られずブレーキが効かないことになる。航空機の場合は、最新で最高の着陸速度となるB777/B787の最大着陸重量は180トン前後、着陸滑走距離は2160m/1750mとブレーキにかかる負荷は大きく制動距離(時間)も長い。

 これに対し自動車は、重くても車重は2トン、制動距離は長くて200m、時間にして4〜5秒のことで、冷えた状態のブレーキ系がブレーキペダルを踏んで発熱し、十分な制動効果が得られるまで温度が上昇するには条件的に無理が多い。

 実際、極限の制動性能が求められるレーシングカーの場合にも、たとえばグループCカートヨタTS010の設計段階では、ドライ時はカーボンブレーキ、ウエット時は従来型鋳鉄製ブレーキを振り向けるという、路面コンディション(温度条件)によってブレーキ材質を使い分ける配慮が行われていた。同じようなことはインディカーについても言え、オーバルトラック時は従来型鋳鉄ブレーキ、ロードコース時はカーボンという使い分けがされていた。ブレーキ負担の小さなオーバルトラックでは、逆にピットイン時にブレーキが利かなくなることへの対応策だった。

 絶対性能は高いが、性能を発揮させにくいという特徴から、市販車用としてカーボンブレーキ(C/Cコンポジット)は用意されなかったが、最近、セラミックとの複合材によるカーボン/セラミックブレーキが商品化されている。C/Cコンポジットと比べて温度依存性が低く、それでいて鋳鉄よりは圧倒的に軽いことから、スーパースポーツカーの標準ブレーキシステムとして使われたり、高性能GTカーのオプション装備として用意されている。

 レースエンジニアによれば、いわゆるカーボンブレーキとは別物と考えて欲しいとのことだったが、従来の鋳鉄製ローターよりはるかに軽く、一般公道の使用において強力な制動力が得られることから、優れたブレーキシステムということが出来る。

 ほかにカーボンブレーキの難点としては、ローターの製作工程が複雑なことから、非常に高価なブレーキシステムになっていることだろうか。超高速域からのブレーキングで、安定した制動力を発揮するブレーキシステムとしての能力は抜群に高いが、こうしたスピード域からのブレーキングは、常識的にはサーキット走行以外にあり得ず、またこうした環境でなければ所期の性能を発揮できないシステム、と考えるべきなのだろう。


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