ロータス・エスプリの「潜水艦」をイーロン・マスクが1億円で落札! 007に登場した異質すぎる「ボンドカー」 (2/2ページ)

100ドルで買ったロータス・エスプリは1億円に化けた

 このエスプリもまた撮影後はパインウッドスタジオの片隅に放り出されたほか、「Wet Nellie」などはプロモでアメリカに送られたものの、お役御免のあとはこれまたコンテナ倉庫に放置プレイ。しかも、このコンテナの賃料滞納で持ち主がコンテナごと安値で売り払ってしまったという不始末。

 このコンテナを中身ごと100ドルという値段で手に入れたのは、あるカップルでした。が、ふたりは「私を愛したスパイ」を観たことなかったので、最初はエスプリの価値もわからなかったとか。もっとも、「Wet Nellie」をトレーラーに積んでの帰路、それを見たトラックの運ちゃんがあわてて無線で「き、きみら、なんてもの載せてんだ!」と連絡。ようやく、ことの重大さに気づいたのだそうです。

 その後、カップルが買った「Wet Nellie」はイアン・フレミング(007シリーズの原作者)財団によって正真正銘の本物であることが判明。自分たちが持っていても海に潜れるわけでもないのでオークションに出品を決めたのでした。でもって、それを落札したのがご存じテスラの社長、イーロン・マスク氏で、落札価格はなんと99万7000ドル(およそ1億円)。カップルの驚きとウハウハぶりが目に浮かぶようです(笑)。

 マスク氏は007の熱烈なファンとのことで、このエスプリにテスラのパワートレインを移植して、映画と同じく地上走行と潜水ができるよう改造してみせると、購入後にコメントしています。その後、45万ドルをかけてカスタムに取り組んだという噂もありますが、完成したというニュースはさっぱり。むしろ、トップギアがロータス・エリートを使って潜水マシンに改造したニュースのほうがスポットライトを浴びたほど(笑)。

 それでも、マスク氏はテスラのサイバートラックがエスプリのスタイルを意識したものだと明かすなど、いくらかでも元は取っているのかもしれません。

 最後にちょっとした蛇足ですが、「Wet Nellie」と記していて思い出したのが「007は二度死ぬ」に登場したオートジャイロ(ウォリスWA-116)のニックネームが「Little Nellie」でした。「私を愛したスパイ」の中では「Wet Nellie」と呼ばれたことはなかったのですが、あと付けにしてはシャレた名前を付けたものです。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報