みんな大好き快音の「フェラーリの心臓」は門外不出じゃなかった! 跳ね馬エンジンを積んだ「じゃない」クルマたち

この記事をまとめると

■フェラーリの魅力の ひとつは「エンジン」という声も多い

■フェラーリのエンジンは門外不出ではなく、他社のクルマに搭載されていることがある

■しかし、オリジナルの状態から多少の仕様変更がされているケースも多い

さまざまな車種に搭載されたフェラーリのエンジンたち

 フェラーリの魅力のひとつとして多くの人が挙げるであろうエンジン。

 でも、それは門外不出というわけではなかった。フェラーリではないのにフェラーリエンジンを積んだクルマがいくつも存在するからだ。

 最初の作品といえるのがフィアット・ディーノで、同じエンジンを積むフェラーリのディーノ206GTより1年早い1966年にデビューした。ディーノがフェラーリの創始者エンツォの長男アルフレードの愛称であり、若くしてこの世を去ったことや、病床にあった彼がエンツォに対して次世代F1のエンジンとしてV型6気筒を進言し、それが実行に移されたエピソードは知っている人もいるだろう。

 ただ、ロードカーに積まれたV6はF1用とは別物。F1のひとクラス下のF2用エンジンが、年産500基以上作られた市販ブロックを使わなければいけなくなったので、フェラーリがフィアットにエンジン生産を委託するとともに、フィアットのスポーツカーにも積むという契約を結んだのだ。

 排気量は当初、2リッターであったが、フェラーリがフィアットグループの一員になった1969年に2.4リッターに拡大。後者は同じ年にフィアット傘下に入ったランチアのWRC参戦用ミッドシップスポーツカー、ストラトスに積まれたことでも知られている。

 1980年代にも、フェラーリエンジンを積んだランチアが登場する。当時のフラッグシップセダン、テーマに308GTB/GTSクワトロバルボーレのエンジンを押し込んだテーマ8.32で、車名の数字は8気筒32バルブを示していた。

 ただし同じV8でもフェラーリは各バンクが等間隔爆発になるフラットプレーン、ランチアは振動の少ないクロスプレーンと、クランクシャフトの設計は異なる。こうした設計の差別化は、その後も受け継がれることになる。

 その後はランチアよりもマセラティのほうが、フェラーリとの繋がりが大きくなる。1993年にマセラティもまたフィアットグループ入りし、コントロールがフェラーリに委ねられることになったことが大きい。

 エンジンでいえば、3200GTのマイナーチェンジ版として登場したマセラティ・クーペ/スパイダーに、4.2リッターV8自然吸気を搭載したのが最初。基本設計はフェラーリのF430や458、カリフォルニアやアルファ・ロメオ8Cコンペティツィオーネと共通だ。

 21世紀に入って登場したスーパーカーのMC12は、エンツォ・フェラーリをベースとして開発されたモデルなので、コクピット背後に搭載される6リッターV12自然吸気もエンツォと基本的に同じ。

 2005年にフェラーリの手を離れてフィアットグループの一員に戻ったあとも、現行ギブリ/クアトロポルテ/レヴァンテに積まれるV8ツインターボは、フェラーリが開発や生産を担当している。

 一方、アルファのジュリアやステルヴィオに積まれるV6ツインターボは、このV8ツインターボがベース。ゆえにVバンク角は90度で、マセラティ各車に積まれるV6の60度や、フェラーリ296GTB/GTSの120度と異なっている。


森口将之 MORIGUCHI MASAYUKI

グッドデザイン賞審査委員

愛車
1971シトロエンGS/2002ルノー・アヴァンタイム
趣味
ネコ、モーターサイクル、ブリコラージュ、まちあるき
好きな有名人
ビートたけし

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