トヨタがタイで売るとは思えない「JPNタクシー」を展示の謎! アジアの熾烈極まる「タクシー車両」シェア争い (1/2ページ)

この記事をまとめると

■第44回バンコク国際モーターショーにトヨタLPG HEV タクシーコンセプト(JPNタクシー)が出展

■だが現状タイでのタクシー車両はカローラ・アルティスでスライドドアのJPNタクシーは馴染みが薄い

■アジアのタクシー事情に詳しい筆者がJPNタクシーを展示した「謎」を考察する

トヨタブースでタイ仕様のJPNタクシーを発見

 タイの首都バンコク近郊で開催された「第44回バンコク国際モーターショー」の取材を終えたあと、バンコク市内でバンコク在住歴の長い業界事情通と会う機会があった。会ってすぐ事情通から、「今回のショー会場に置いてあったクルマのなかでとくに印象に残ったクルマはなんですか?」と聞かれたので、「トヨタのLPG HEV タクシーコンセプト(JPNタクシーをタイのタクシー風に外装をカラーリングしたもの)ですね」と答えると、「やっぱり、私もそれなんですよ」とのこと。

 ふたりが注目した最大の理由が、「トヨタがこのモデルを展示した思惑はなんなのか?」というミステリーに近い疑問であった。この展示車はあくまでコンセプトなので、日本仕様をベースに外装のカラーリングや行灯(社名表示灯)、スーパーサイン(空車か否かを示すもの)、運賃メーターをタイのタクシー風にしたものとなっている。

 まず疑問に思うのが、タイで本当に販売を考えているのかどうかである。ただ、そのためには現地生産しないと価格面ではとても折り合わないので、単純にJPNタクシーをタイでも販売しようというわけでもなさそうだ。

 そもそも、タイでのタクシー車両はカローラ・アルティス(グローバルサイズの海外[欧州]向けカローラセダン)となり、現行日本仕様のカローラセダンとなるナローボディよりもボディサイズの大きい3ナンバーとなるので、背の高いMPV(多目的車)スタイルとはいえ、5ナンバーサイズとなるJPNタクシーではタクシー車両のランクダウンにもなりかねない。

 ラゲッジスペースの使い勝手が決してよいわけではないが、カローラタクシーはCNGやLPガス車が多く、トランクの大半がガスタンクで占められているので、その点では積載能力に限ってはJPNタクシーのほうが向上しているといえよう。

 ただし、日本のようにミニバンやルーミー系、ハイルーフ軽自動車のようなスライドドア車ばかりが売れているわけではないので、スライドドア慣れしておらず、電動スライドドアなどはさらに馴染みが薄い。しかも日本のようにタクシーは自動ドアではないので、JPNタクシーをそのまま持ち込むとかなり混乱を呼ぶ可能性が高い(自分で開け閉めするより、電動スライドドアは開閉に時間がかかるのも問題となりそうだ)。

 数年前にニューヨークでトヨタの海外向けミニバンとなるシエナのイエローキャブがよく走っていたのだが、目的地についてお客が降りたあと、スライドドアを締めずに立ち去り困惑するドライバーの姿(自動ではなかった)を見たことがある。スライドドアは日本車発祥ともいわれており、世界的には日本ほどポピュラーな存在にはなっていないので、主要なタクシー車両にするのはなかなかハードルが高いようにも見える。

 それだけ珍しい存在でもあるので、ショー会場での注目度は抜群。子どもウケはタクシーというだけでかなり良く、言葉はわからないものの「日本で乗ったタクシーがある」といったノリで近寄る若い女性もいた。タクシー業界関係者かは定かではないが真剣にチェックしている男性もいた。とにかくメディア関係者か一般来場者か、そして老若男女を問わず多くの人から注目されていたのは間違いない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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2019年式トヨタ・カローラ セダン S
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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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