トヨタがタイで売るとは思えない「JPNタクシー」を展示の謎! アジアの熾烈極まる「タクシー車両」シェア争い (2/2ページ)

ASEAN地域の次期タクシー車両はJPNタクシーなのか?

 ASEAN地域で筆者が訪れた国のタクシー車両は圧倒的にトヨタ車が多い。タイでは9割近くといっていいほど圧倒的に「カローラ・アルティス」となっている。インドネシアでは、そもそもコンパクトセダンのヴィオスベースのタクシー専用車「リモ」ばかりだったが、最近では小型MPVとなる「アヴァンザ」ベースの「トランスムーバー」が増えてきており、この2台のトヨタ車でほぼ占められている。

 ベトナムでは中型MPVとなる「イノーバ」がタクシー車両となっている。そして香港では、まだまだ「クラウン・コンフォート」系が多いのだが、そのなかに交じり「コンフォート・ハイブリッド・タクシー(JPNタクシー)」が走っている。

 単に新車販売だけでなく、タクシー車両でも東南アジア諸国ではよく使われているトヨタだが、安心していられない背景もあるようだ。

 インドネシアの首都ジャカルタやタイの首都バンコクでは、すでに中国・比亜迪(BYD)汽車のBEV(電気自動車)タクシーが走り出している。東南アジア各国では大気汚染対策や原油輸入量抑制のためZEV(ゼロエミッション車)の導入に積極的であり、すでに路線バスでは、中国系のBEV路線バスが積極的に導入されている。

 タクシー車両に関しても各国政府がBEV化に積極的に舵を切れば、ちゃぶ台返しであっという間にタクシー需要を失いかねないのである。そうなる前にLPガスハイブリッドを搭載するJPNタクシーのような車両をとりあえずラインアップして、タクシーニーズを維持しようとしているのかもしれない。

 香港はすでに政治体制も含め社会の中国化が顕著となっている。そしてすぐ隣は広東省深圳市、つまりBYDのお膝元なので、香港のタクシー車両がBYD化されるのも時間の問題ともいわれている。かつてシンガポールのタクシーはほぼ100%がクラウン・コンフォートだったが、あっという間に韓国ヒョンデにそのマーケットを奪われたという事実もある。

 ここからは深読みとなるが、東南アジアでは先代シエンタの人気が高く、いまも香港などを除けば先代モデルのままとなっている(つまりフルモデルチェンジが遅れている)。次期東南アジア向けシエンタは日本仕様とかなり異なるとの情報もある。しかも、BEVが設定されるのではないかとの情報まである。現行東南アジア向けシエンタもMTが用意されたり、最低地上高が日本仕様よりも高かったりと、東南アジア市場に向けた違いがある。

 つまり、次期シエンタベースのBEVかどうかは別としても、次期シエンタもしくは次期シエンタベースとなる専用のタクシー車両を用意するにあたってのリサーチとして、今回、タイ版ともいえるJPNタクシーをショー会場に展示したのかもしれない。

 いずれにしろ、謎が謎を呼ぶ今回のLPガスHEVタクシーコンセプト(JPNタクシー)のバンコク国際モーターショーでの展示は、とくにクルマ好きの間では大きな話題となり注目されたのは間違いない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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