【試乗】名前が変わっただけのことはある! スバル・クロストレックはXVよりも走りの質感が大幅アップ (2/2ページ)

名前の変更に相応しい走りの進化を確認!

リミテッドは走り始めると極めて質感の高い走りであることにまず驚かされる。

タイヤの転動に対して振動がほとんどなく、非常に質感の高い走り始めだ。一般道特有の路面の荒れた部分を通過しても、サスペンションからのハーシュは抑えられ、また車体への振動伝播や収束も早く静かで快適な室内が実現されている。ルーフまわりの音が静かなのも特徴的で、これはルーフを横断する補強バーに塗布された防音効果を持たせた接着剤の効果によるものだという。

また、Wピニオンのステアリングは車高の高いSUVでありながら、路面からのさまざまな入力によるステアリングへのキックバックを低減し、落ち着きのあるステアフィールを実現している。それでありながらハンドルを切れば即座にフロントの回頭性が高まり、正確なライントレース性を見せるのはスポーツセダン並みで、SUVとは思えない軽快感を実現していると言える。

一方で四輪駆動車特有の安定感も備わっていることで、走って楽しく、また安定感があり長距離も疲れないという開発コンセプトを高度に実現することが可能となっている。

インテリアに目を移せば、大型化されたセンターモニターにさまざまな情報が表示され、機能性と視認性が大幅に向上していることがわかる。話題となっている「What3words」のナビゲーションが乗用車として初搭載されたことで、非常に高度で正確なナビゲーション設定機能が与えられたことになる。

そのほか、クルマのロールやピッチング角度などが表示されたり、ステアリングの操舵角がアニメーションで示されるなど、さまざまなインフォテインメント機能が備わっていて、さらにスマホとワイヤレスでリンクさせることが可能となっているのも実用上好ましいと言えるだろう。

前席左右にはシートヒーターが備わり、また助手席も含めて電動パワーシートとなっているのは優れているが、後席に関してはシートヒーターの設定がなく、またシートバックのリクライニング機構も備わらないため、そのあたりは競合車に対してやや弱点となっていると言えるかもしれない。

荷室に関して言えば、若干フロアが高いが、ゴルフバックが3セット横積み可能なほどの積載能力が与えられていると謳われているものの、見た目の感じではそこまでの広さを感じない。従来のXVが340リットルの荷室容量だったのに対してクロストレックは315リットルと数値的には縮小しているものの、実用容量は十分に確保されているのだという。

次に「ツーリング」グレードに乗り換える。こちらは、17インチのホイールにヨコハマタイヤの「ジオランダー」ブランドで225/60サイズのタイヤが装着されている。走り始めるとその差がすぐにわかった。トレッドパターンノイズやユニフォミティによる振動がやや大きく感じられるのだ。

ハブベアリングなどの剛性が高まったことでタイヤやホイールの精度の高さが求められる。ちょっとしたユニフォミティ変化などが逆にシミーとして伝わってしまうところは新たな課題といえるかもしれない。

サイドウォールの高い17インチ60サイズのほうが一般的には乗り心地が良くなると考えられるが、SUV向けのジオランダーはタイヤサイドウォール剛性が高く、かえって振動の伝わりが大きくなってしまったと言える。この辺は今後さらにタイヤとのマッチング向上を期待したいところだ。

ブレーキは電動マスターバッグとなり、ブレーキペダルのストロークが減少して踏力に応じたリニアな制動特性が得られている。これは兄弟車とも言える新型インプレッサと共通している新技術の部分である。

今回一般道を走ってみて、郊外の道路および高速道路区間を巡行する走りだったが、燃費は車載の燃費計でリッターあたり10キロから11.5キロほどであり、HV車としてはあまり良い数値とは言えないことがわかった。今後、さらにさまざまなシーンでクロストレックを走らせ、実用燃費をいろいろ計測してみたいと思っている。また、冬季になれば雪道などで走らせて、スバルの得意とする雪上性能や悪路性能なども検証していきたい。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報