いま新車は「残価設定ローン」か実質「リース」で乗るのが主流! イマドキで片付けられない「社会情勢への不安」の現れ (2/2ページ)

いまだクルマがぜいたく品扱いされているという問題点も

 継続してリースで乗ってもらうということもあまり考えていないようで、リース契約満了後はメンテナンスを担当するディーラーで新車を買ってもらうというのが念頭にあるようだ。

 また日本独自の社会背景もあるようだ。新車の価格は安全運転支援デバイスの充実などもあり、目に見えて高まってきている印象が強まっている。スーパーハイト系カスタムグレードの軽自動車でも、支払総額で250万円ぐらいになるのも珍しくない。失われた30年ともいわれているが、賃金が上がらないなか、販売現場では「新車を現金一括払いで購入するのはかなり無理がある時代になっている」という声も多く聞く。もちろん20年スパンぐらいの長期間で乗り続けるのならば選択肢として現金一括払いもまだまだあるだろうが、短期間で乗り換えるケースではローンでは、月々の支払額を生活費の一部と捉えて新車を保有し、「月々の支払いが変わらないなら」と、新車へ乗り換えるケースも目立っている。そのような傾向からもリースがだいぶ馴染みやすくなってきているのである。それだけ、さまざまな仕掛けをしないと新車需要がなかなか回らない世の中になってきているのである。

 先日タイを訪れると、「タイは新車価格が日本に比べても高めだ」という話を聞いた。タイだけでなく、東南アジアではこの傾向は同じのようである。そのなかでローンを利用して新車購入するのが基本という話を聞いたことがある。少し前には国によっては無理して(ローンを組んででも)クルマを所有するとより報酬の高い仕事につけるなど、生活レベルの向上のためのツールとして考えてクルマを所有する人も多いと聞いたことがある。ただ、バンコク市内では中間層でも複数所有は珍しくないというので、国民所得が豊かになりマイカー需要が増えているというほうが現状では多いようだ。どちらにしろ、よほどのお金持ちでもない限りは現金一括払いではなく、ローンやリースを利用して新車を乗るのが世界的にはスタンダードとなっているようである。

 日本国内ではクルマがないと生活がままならない地域があるが、政府はいまでもクルマをぜいたく品扱いしている。確かに高度成長期には「所得に余裕がでてきたのでマイカーを」という需要があったが、いまでは「クルマがないと生活できない」という切実な事情から所有する人も多いのに、30年間賃金が上がらないなか、いまだにぜいたく品扱いされている。つまり、いまどきのローンやリースが注目される新車販売の現状は、単にライフスタイルの変化というものではなく、現金で新車が買いにくいことも大きく影響しているように見える。単に給料が上がらないというだけでなく、生活防衛の意味からまとまった現金は手元に置いておきたいといった理由でローンを利用する人もいるようだ。とにかくいまの日本は社会不安要素が多すぎるのは間違いないようだ。

 そもそも新車販売支援の目的でメーカー系信販会社の商品がメインで、新車を担保にすることで与信が通りやすいとされた、ディーラーローンだが、いまでは与信が通らないケースも目立ってきているとのこと。社会不安の増大などにより、新車需要の刺激策として残価設定ローンや個人向けカーリースが十分効果を発揮できない時代がやってこようとしているのかもしれない。日本の失われた30年というものは、新車販売現場にも重くのしかかっているように見える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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