「ドアノブどこ?」なクルマも存在! 「回すレバー」「フラップ」「グリップ」ときて……クルマのドアハンドルの進化がスゴイ!! (2/2ページ)

最近ではドアハンドルがボディに格納されるクルマも!

 さらにこの間の輸入車を見てみると、やはりフラップ派が主流。BMW、アウディ、プジョーやジャガーと、フラッグシップモデルにもフラップタイプが採用されていることがわかります。ただ、それに真っ向から対抗してグリップタイプを貫いていたのが、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンでした。以前、メルセデス・ベンツ本国の開発者にその理由を聞いたことがありますが、まずは使い勝手が良いこと。大きな手でも小さな手でも、指が長い人も短い人も、手袋をしている手でも握りやすく、グリップの上からも下からも握ることができます。フラップだと指の力だけで開けることになりますが、グリップなら握って手のひら全体の力が入るため、少ない力で開けられるのもメリットだといいます。いわゆる、ユニバーサルデザインの考え方です。

 そして2つ目は安全性を最優先していること。フォルクスワーゲンに聞いたところ、万が一事故が起こってしまった際に、衝撃でドアが変形したり、ロックが解除できなくなっても、ドアハンドルにロープなどを巻き付けるなどして力を加えやすく、車内に閉じ込められた人を救助しやすいという理由があるのです。

 また、3つ目の理由としてはスマートキーとの相性がいいことも挙げられるでしょう。キーをポケットやバッグのなかに携帯していれば、手でグリップを握るだけでロック解除ができ、そのままドアが開けられるのですが、フラップタイプの場合には別でスイッチを備えなければならないことが多いため、近年では国産車にも急速にグリップタイプが増えてきたという背景があります。

 ただし、近い将来にはドアハンドルそのものがなくなるのでは、とも言われています。それが、テスラやジャガーE-PACE、メルセデス・ベンツSクラスなどが採用している、ドアハンドルレスタイプ。一見するとボディのどこにもドアハンドルがないのですが、キーを持って車両に近づくと、シャキッとドアハンドルが飛び出してきます。そしてドアを閉めて走り出したり、降りてロックをすると再びドアハンドルが格納されるという機構です。見た目のスマートさはもちろん、空気抵抗や防犯の観点からも優れる新世代のドアハンドルとなっています。

 また過去には、どうやってドアを開けるのかまったくわからないクルマも少なからず存在しました。いまでも都市伝説のようになっているのは、イギリスのコーチビルダー的なスポーツカーメーカー、TVRから登場したタスカン・スピードシックス。ドアには何もなく、まだスマートキーなんてない時代に、いったいどうやって開ければいいのかと探し回る人多数。正解は、サイドミラーの下にあるスイッチを押すと開く仕組みになっていたのでした。

 国産車では、トヨタC-HRのリヤドアのドアハンドルも個性的。デザインを崩したくないという理由から、Cピラーに近く高い位置に小さなフラップタイプのドアハンドルが設置されています。フロントドアの位置からすると、かなり目線が高いところにあるため、最初は気が付かない人も多いのです。「開けにくい」というクレームもけっこうあったのだとか。

 そして、そのC-HRの反省を踏まえて登場したのが、新型プリウスのリアドアのドアハンドルです。同じくデザイン上の理由から、Cピラーに埋め込まれるように設置されたフラップタイプなのですが、じつはこれは機械的なハンドルではなく、スイッチ操作による電動モーターでロック解除をしてドアを開く構造が採用されています。これは、ドアハンドルを高い位置にして、なおかつスペースの関係で縦型にしなければならなかったため、開けにくさを解決するための機構。これにより、指の力を入れなくてもカチッと一発でドアが開くようになっています。

 ということで、さまざまな変遷の歴史をもつドアハンドル。今後はどんな進化をげていくのか、注目です。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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